昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

単純な面白さだけなら当ブログナンバーワン『猿の見る夢』

 
面白えぇッ!!
 
そうね、何から語ろうか、、、先ずは表紙ですね、うん。
写真見てよ。
鮮やかなる深紅に憂い顔のピエロ、明朝体でタイトルど~~ん!
オーラが凄ぇ、面白そうオーラ。俺の面白レーダーがビコンビコン反応してます。
表紙の絵画は、鴨居玲「出を待つ(道化師)」
いやぁ~素晴らしい、表紙見た瞬間、即決。
そして、まさに期待を裏切らない面白さでした。

メガバンクから、成長著しいファストファッションブランドへ財務担当として出向している薄井正明59歳。
仕事家庭共にそつなくこなし、愛人との関係も良好。
そんな中、妻が夢見を占うという謎の女「長峰」を連れてきて、、、

面白えぇッ!!

いやね別段何も起きません、殺人とかテロとかそんな大事件一切無し。
只々オッサンの日常描くだけで、こんなに面白いかっつーね。
自分勝手で器が小さい、虚栄心とつまらないプライドだけの男。
ハッキリ言って下衆です薄井さん。でもなぁ~どっか憎めないだよなぁ~
俺もさ、外道は許せません。
自らの欲望の為だけに、他人を食い物にするするような輩共。
でもなぁ~外道じゃないんだよなぁ~薄井さん→下衆の極みですけど。

職場の女性を下心丸出しで、高級レストランのディナーに誘っときながら、ちょっと高いワインをオーダーされて苛つく様とかね。
ここいら辺の絶妙なるセコさ加減、親近感バリバリでもう他人とは思えません、そうそう薄井さんもガラケー愛用だし。
終始自己評価の高さと、周りの態度とのギャップに納得いかないみたいなね、ハイハイあるあるあるw
でもさ、大なり小なり男なんてこんなもんじゃねーの?
世の女性たちもさ、許せないッ!って目くじら立てるより、男ってバカねぇ~と余裕の微笑で流したほうが、万事絶対上手くいきますって。

しかしッ、流石の俺も、美優樹(みゆき)という名前の女性を「みゆたん」とは呼ばんわッ!
薄井と愛人美優樹のメールのやり取りです、初見で思わず吹き出しちゃいましたw
オイオイオイ小説で笑いを取られるなんて『鴨川ホルモー』以来だぜ(←いずれココにも感想文アップします)
女性作家が、こんなに魅力的かつ下衆なオッサンキャラ描けるかっつーね。
いやぁ~感服致しました桐生先生。
そんな下衆の極み薄井さんが右往左往する様を、自分には累が及ばない読者という絶対安全地帯から覗ける愉悦。
他人の人生をノーリスクで体感できるこの特権こそ、読書の醍醐味也。

御存知の通り、毎回五段階評価、独断と偏見で星を付けさせていただいてますが、最近は読書慣れといいますか、目も肥えてきまして、只面白いだけでは三ツ星止まり(←偉そうにスイマセン)の状況です。
只面白いだけではなく、感動して号泣なり、今まで読んだことがない初めてのパターンなりというプラスアルファがないと、近頃は四ツ星付けなくなったんですが(←偉そうにスイマセン)、今回は単純にその面白さだけで、感動も驚きも皆無にして余裕の★四つですッ!
中年男性諸氏に強くお薦めしたい。勿論、若者と女性には絶対お薦めしません。
まさにオッサンリトマス試験紙
この作品であなたのオッサン加減が測れます。
あっ、あと下衆に対する許容度もねw

下衆の極み
★★★★☆