昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

活字最恐『ぼっけえ、きょうてえ』

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岩井志麻子

 

ぼっけえ、きょうてえ」とは、岡山地方の方言で「とても、怖い」の意。

毎度ながらYouTubeをダラ見しっとたら、この映画のトレーラーに流れ着きまして。
もう、直リンも憚られる程の強烈さ。
流石、試写会でゲロ袋を配る鬼才、三池崇史監督。
、、、タップ。
映像が無理なら活字でって事で、原作を。

明治後期の、岡山の遊郭、農漁村を舞台にした四話短編連作。
明治後期とはいえ、まだまだ封建時代の因習が色濃く残る時代。
そして当時における、村社会独特の排他性・閉塞感。
集落全員が顔見知りで、住人の一挙手一投足が全て噂になってしまうという息苦しさ。
現代都会における、隣の住人の顔も名前も知らないという乾ききった人間関係とはまた異質の嫌悪感を放つ。

この閉塞空間を土台に社会的歪み、貧困・飢餓・差別等が交わり、それによってひたすら醸成されていく人間の心の闇。
戦争以外の、この世のありとあらゆる醜悪なモノをブチ込んで、淡々と岡山弁の語りで聴かせるその様は本当に怖い。
しかも俺、一時岡山に住んでたこともあるんよ。だから余計に。
フィクションではあるものの、かつて日本が貧しかった時代、似た様な話はそれこそ掃いて捨てるほどあったんではないでしょうか。
何が怖いって、ホント人間が一番怖いわ。

短編四話なんで当たりはずれはありますが、表題の「ぼっけえ、きょうてえ」ずば抜けて恐ろしいです。
伊達に第6回日本ホラー小説大賞獲ってないぜ。

 

↑ 十年前に書いた感想文ですが、未だに活字最恐
★★★★☆