昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

皆知ってるけど、実は知らない『西遊記』

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平岩弓枝

 

皆さん御存知「西遊記」です。
そう!皆知ってんだけど、ポイントポイント押さえてるだけで、全体フンワリでしょ?
そーいえば俺も、かの有名ドラマ観ただけで、細部どーなってるか全然知らねぇわってことで。
こりゃ良い機会だから、ガッツリ読んでみるかと。

軽く導入エピソードを経て、太宗皇帝が三蔵を召し出し、天竺へ旅立つところから。
、、、ん?
悟空が天界で大暴れするところは?
オイオイオイ、そこが一番面白ぇんじゃねぇーかッ!
奇想天外な仙術を用いて、天界の神々とバトルに次ぐバトル、遂にはラスボスお釈迦様とのタイマン楽しみにしてんのに。
カットです(哀)
名シーンすっ飛ばしに落胆しつつ、序盤を読み進めることに。

確かに楽しみにしていた、悟空誕生~天界大暴れ~お釈迦様に敗れ五行山に封印の件はまるまるカットされてはいるものの、話の節々で悟空の回想や、妖怪退治の際、駆けつける天界からの助っ人エピソードで補完されるので、それほど気にならず。

聖人君子の三蔵、腕っ節の悟空、お調子者の八戒、生真面目な悟浄、馬に化身した玉竜とお馴染みの面々が揃うと、安定した面白さ。
基本、新しい街や村に入ると何やらトラブルが起こって、悟空たちが妖怪退でめでたしめでたし、ハイ次の村へというパターンの繰り返しなのだが、これが毎回趣向を凝らしてあってあきさせない。

俺の既存イメージによる妖怪退治における各キャラの活躍度は、悟空6:八戒2:悟浄2ぐらいの印象だったのだが、本作では、悟空6:助っ人3:八戒1ぐらいの割合になってます。
そう、助っ人大活躍。仏様、天界の神々、仙人など、二回に一回ぐらいは助けにきてくれるっつー感じ。
これがかなりワクワク感をそそる。次は誰だ?みたいな。
仏教の仏と道教の神の微妙な力関係とか、俺大好物♪
俺さ、一時期、死後の世界とか「女神転生」にハマって、軽~~く宗教勉強したことあんのよ。
中でもやっぱ、仏教の世界観には圧倒されましてね。
世界の中心に巨大な山、須弥山(何とその高さ576,000㎞ッ!!)が聳え、その南部に人間が住む大陸、瞻部州(せんぶしゅう)があってみたいなヤツ。
今回、そのとき得た知識をフル活用。マイナーな仏様とか難解な地名とか出てきても、ああ知ってる知ってるとイメージ構成に大いに役立ってくれました。

で、平岩先生、人情時代物の名手だけあって、泣かせるのがお上手。
まさかまさか、「西遊記」で泣かされることになろうとは、夢にも思わなんだ。
悟空が健気でねぇ。三蔵命ですよ。何が何でもお師匠様を守り切ってみせるッというその心意気。素直に感銘致しました。
小四ぐらいの男の子が、病弱な母親を気遣い、家事を一生懸命手伝ってるようなイメージ。
また、三蔵が出来た人で(高僧だから当たり前なんだけどね)。師弟がお互いを認め合い、旅を通して絆を深めていく様を高次元から俯瞰出来る読者の立場は、まさしく作中の釈迦如来にも通じるところ。大変微笑ましく読ませていただきました。

加えて、三蔵と見守って下さる神仏が話す台詞を読んでいると、とても爽やかな心持ちになります。
何故ならば、丁寧で美しい日本語を使っているから。
いやぁ~言葉遣いって大切。
悟空のぶっきらぼうな喋り方も愛嬌がありますが、やっぱり綺麗な言葉って素晴らしいなと再認識した次第。

上下巻、さらに本文が二段構成で、こりゃ相当手強いぞと覚悟の読書でしたがサクッと読了。
面白かった。取り敢えず「西遊記」全編押さえましたと。
でもやっぱ、お釈迦様の指に落書きして、五行山に封印されるトコ読みたかったなぁ~~

あッ、最後に一つ。
「如意棒」 
言わずと知れた悟空の武器ですが、作中での表記が金箍棒(きんこぼう)に。
正式名称が「如意金箍棒」らしい。
普通に「如意棒」で良くね?金箍だと頭の輪っかとカブってるのがちょっと、、、


いつか、原典を忠実に翻訳した作品にも挑戦したいなと
★★★☆☆