オッサン向けラノベ『深海の人魚』
森村誠一著
政財界の大物たちが夜な夜な集う渋谷の高級クラブ「ステンドグラス」
噂ではこの店には、超VIPのみが体験出来る“特殊接待"というものがあるらしいのだが、、、
官能小説?初挑戦。
いやぁ~~、始業前の朝に会社で読むもんじゃないねw
日刊ゲンダイに連載されてたそうで。
嗚呼、成程成程、THE日刊ゲンダイテイストですな。
電車の中で、タブロイド夕刊を折り折り読んでるサラリーマンが目に浮かぶよう。
ターゲットを40~60代男性に特化、まさにオッサン向けラノベ、親父のファンタジー。
故に、この層以外(若者・女性等)が本作を読んだならば「はぁ!?何コレ」という反応になりかねない。
で、俺はというと、、、面白かった!
遂に俺もこの域に達してしまったか。まぁオッサンだから当たり前ですね。
基本的に性的悩みを抱えるVIPに極上の女性を派遣して問題解決の流れ。
高僧の脱童、配偶者に先立たれてのEDからの復活、超人気歌姫に黒服を派遣する男女逆パターン等、多種多様な設定を配し飽きさせない。
普通ならいつもの感じで、リアリティに欠けるだの、感情移入出来ないだの言いたいところだが、何せホラ“親父のファンタジー”なんで。
「ハリーポッター」読んで、箒で空飛べるわけないじゃん!とか言わないでしょ。
流石の俺もファンタジーに突っ込み入れるような野暮じゃありません。
そう、ファンタジーなんです。ファンタジーなのに、、、
折角大人の男と女が繰り広げる悦楽の夢の中で気持ち良くまどろんでるのに、突然枕元に冷水をブッかけるが如き無粋な話が、、、
「九条の相性」
章題見た瞬間に嫌な予感がしたけど。
PKOで紛争地に派遣される自衛官を接待する話。
どうして娯楽作品に無理矢理思想信条捩じ込んでくるかね?
今までの艶っぽい雰囲気をブッ壊して、いきなりママとホステスが憲法談義を始めるなんて興醒めもいいとこ。
この話だけ目茶目茶浮いてます。
浮いてるといえば、、、森村先生。
御歳八十云歳。
文章に隔世感があると申しましょうか、、、語彙が厳めしいッ!
>二人は敲掌ハイタッチ(互いの掌を敲く)した。
ハイタッチ説明する作家さん初めて見た。マジか。
お褥(しとね)とか夕餉(ゆうげ)とか衣紋(えもん)とかね。
わざと古い言葉使ってらっしゃるんでしょうか?それとも地?
流行り言葉やスラングはあまり好みではないんで、こういう文章は読んでて心地いいですね。
親切に振り仮名多めだったし、助かりました。
でも、29歳の売れっ子俳優がファンに放ったセリフ
>「はて、どこでお会いしましたかな?」
こりゃ無ぇーわ。
森村先生、幾らなんでも二十代でこの言い回しは無ぇっス。
さて。
ラブゲーム短編連作の裏に、全体を通す軸としてある殺人事件が絡んでくるのだが、これだけ夢のようなファンタジー世界で荒唐無稽に浮遊しておきながら、最後は実にあっけなく現実に着地するのにビックリ。
ある意味どんでん返しですよ、あのラストは。
おっさんリトマス試験紙
★★★☆☆