昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

満点五ツ星『誇り高き日本人』

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泉三郎著

 

「国の運命を背負った岩倉使節団の物語」

明治4年11月、岩倉具視が率いる明治政府の使節団が先進の西洋文明を学ぶため、横浜港から旅立った。

ヤングは知らんだろうが昔五百円札というのがあってだな。
そこでしかめっ面をしておったのが、今回の主人公岩倉具視だ。
地球一周、一年十ヶ月の大旅行には及ぶべくもないが、自分も六百項超、一ヶ月に渡り大著を読破した今、まさに万感胸に迫る思いである。
この沸き上がるような感情を、貧小なる語彙と稚拙な文章ではとても伝えられそうにない。

そもそも本著は、使節団メンバー久米邦武の『米欧回覧実記』を泉氏が解釈したもので、本記はその感想である。
したがって本記読者の皆さんは、“感想の感想の感想”を読んでいることになるわけで、、、
まるで、伝言ゲームじゃねぇーかッ!
嗚呼、この感動を伝えることは出来るのでしょうか?

兎に角。
数年前までちょんまげ結って、刀を差しとったサムライが欧米各国を歴訪するわけよ。
これが面白くないわけないっつーのッ!
伊藤博文ら少数の洋行経験者がいるとはいえ、殆どが初体験なんだから。
何から何まで初体験揺れるハート
洋服、洋食、洋式便所w
便所の周りに引きちぎれたボタンと紙に恭しく包まれた“黄金”が→→→アメリカ人ブチキレみたいなww
横浜を出港した瞬間から漫画のようなエピソード連発。
そこで俺のお気に入りを一つ。
サンフランシスコのホテルにて

>部屋割りも決まったのでボーイに促され、ロビーの一隅にある小部屋に案内された。
そこにはすでにアメリカ人の男女三人、こちらを向いて立っている。
(妙な部屋に連れ込まれたな)
と、けげんな面持ちでいると、ボーイがドアを閉め、ゴトンという音がして部屋がまるごと浮き上がった。
「あっ!」

そう!エレベーター初乗りw
前半はこんな感じでグイグイ読ませる。

そしてこの圧倒的文明を目の当たりにして、いかに明治日本を近代国家に成長させていくのかというのが後半の肝。
明治維新という世界史上稀に見る奇跡的革命を成し遂げた偉人たちとはいえ、自信喪失なわけですよ、欧米列強とのあまりの格差に。
二百五十年の太平の眠りから叩き起され、いきなり帝国主義の荒波の中に放り込まれたわけですから。

それでも、アメリカで未開の荒野と開拓精神に触れ、イギリスでは世界最強の工業生産力を体感し、フランスでは芸術とブランド力、量だけではない質の大切さを学び、ドイツでは新興国の手本、鉄血宰相ビスマルクの言葉に勇気づけられる。
そして文明国の暗部、差別や貧困、アジア・アフリカへの侵略行為。
仰ぎ見た国々も決して完璧ではない。
一国を一国を経る毎に確実に成長する使節団メンバー達。
何としても日本を近代国家として独り立ちさせねばならない。
彼等の使命感には、かつて幕末の動乱で、新生日本の誕生を見ることなく散っていった仲間達の思いも宿っているのだから。
ホント、坂本龍馬高杉晋作も一緒に連れていけてたら、どれほど日本の為になったろう、、、

第四の国難ともいわれる今日の日本ですが、今こそ明治日本の若きリーダー達に学ぶべき時では。
あの明治維新という大革命、支配者階級である武士の特権を全て剥奪したことに比べれば、議員定数の削減、公務員改革なんて屁でもねぇでしょ?
先輩達がやってんだから俺達が出来ねぇわきゃねぇだろ、同じ日本人だぜ。
誇り高いか?って言われると、、、う~~ん、ちょっと自信無いけどw

いや~~他にもイロイロあんのよ、宗教の話とか、天正遣欧少年使節三百年の邂逅とか、東西比較文化論、大久保vs.西郷etcetc、、、あ~~書きたいこと多すぎて全然纏まらん、っつーか、伝わってる?感動??


面白さと感動の二本立て
当ブログ初の満点(読了三百冊中、あと三作品あります)
★★★★★