昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

昨今の価値観押し付け社会に捧ぐ『月は怒らない』

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垣根涼介

 

市役所の戸籍係に勤める地味な女「恭子」

美人でもない彼女に、今日も何故か男が寄ってくる。

謎の女と性格も年齢もバラバラの男三人。

奇妙な四角関係の行方は?

 

俺なりの解釈で簡単に纏めると、
「人は他人の人生は生きられない。しかし解り合うことは出来る」
ってな感じでしょうか。

そーなんですよ結局のところ、人は人、自分は自分なんですよね。
これは、血を分けた親兄弟や永遠の愛を誓い合った恋人同士でも同じこと。
それでもお互いの価値観を認め合い、共に人生を歩むことは出来ると。

他人に自分の価値観を押し付けたり、相手を強く思うが故に自分の制御下に置こうとする。
お前のことをこんなに考えてんだから、俺のことももっと理解してくれ!
これが不幸の始まり。
初めは見てるだけだった。
見れば話したくなる。
話せば付き合いたくなる。
付き合えば抱きたくなる。
抱けば心も手に入れたくなる。
人の欲というのは何とも、、、

SNSなんか解りやすいですよね。
俺がイイネ!してんだから、お前もしてくれよみたいな。
解っちゃいるけど、やっちゃいます。
世間の常識だろッ!って、それ価値観の押し付けじゃありませんか?
基本この世の中、人に迷惑をかけない限り、あらゆることが自由なんです。

弘樹の気持ちも解る、解るけど、日本は自由恋愛。
恭子の恋愛観は認められないという自分の価値観は自由、しかしそれを押し付け、恭子に三股をやめさせる権利もない。
同時に複数の異性と付き合うのは駄目ってのは世間の常識ではあるけども、法で定められてるわけじゃない。
じゃあどうするか?
別れるか、それとも自分と別れるデメリットを相手に理解させ、その行為をやめさせるかしかない。
う~~ん、受け入れ難いよね、だって浮気してんのはアッチなんだから。
でもね、作品中では意外とすんなり納得出来るんですよ。
皆さんも周りを見渡して御覧なさい。
世間の常識を戴いて、我こそは正義也と他人に自分の価値観をグイグイ押し付けてくる輩の何と多いことか。

世間の常識=正義=自分の価値観

この強烈なバイアスほど恐ろしいもんはありません。
俺も日常生活でしょっちゅうイライラしってけど、自分ルールで物事をジャッジしてるかも?と常にチェックしとかねぇと。
でもやっぱ、同時に三人と付き合うような女性は俺、無理っス。
結局保守的なんだよなぁ~
他人に押し付けさえしなけりゃ、俺がどう思おうがこれもまた自由。
何と言われようが三股は無理ッッ

兎に角徹頭徹尾、人は人、自分は自分、自分の人生を他人に背負わせるなということが恋愛を通して語られます。
何か最近、こういうことを謳ってる作品が多いような、、、
そんだけ今の日本が価値観押し付け社会なんでしょうか?

舞台が吉祥寺なんで、場面が浮かぶ浮かぶ。
馴染みの街が舞台だと没入感が凄い。
今度、武蔵野市役所の辺り行ってみようかなw
恭子さんと出会えるかも?
でも俺、クールビューティーってタイプじゃないんだよなぁ、三股無理だし(←クドいッ!!)


実は四人目がミソ
★★★☆☆