昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

血と硝煙と油の臭い漂う「ガールズ&パンツァー」『鋼鉄のワルキューレ ケーニヒスティーガーin WW2東部戦線』

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水樹ケイ著

 

人類が経験した戦争の中で最も苛烈で凄惨な戦い、第二次世界大戦に於ける独ソ戦
ヒトラースターリンという絶対に相容れない独裁者同士が、酷寒の大地で繰り広げた殲滅戦。

間口激狭。例えば「サラバ!」なんかは、老若男女全ての人にお薦め出来る作品だったのに対し、コレは、、、
こんなん読んでんの、戦車マニアの軍事オタクだけでしょ→水樹先生スイマセン。
モッタイナイ。MOTTAINAI

のっけから圧倒的戦闘描写。
東部戦線と戦車の知識がない読者は、えぇ~~っと、、、無視ッ!完全に置いてきぼり。
俄シャットアウトッ!間口激狭。
モッタイナイ。MOTTAINAI

T-34とかティーガーIIとか解ります?
戦車ね、戦車の名前。
徹甲弾榴弾の違いは?
ヤベぇ、ココの常連で軍オタの方いらっしゃいます??

正直表紙見て、、、無いなと。
東部戦線戦車戦モノで女性車長が主人公?
でもね、かなり分厚かったんです。し・か・も、本文二段組。
こりゃ読破に相当時間かかるなと。
ハイ、感想文待ちがこの時点(三月中旬)でかなりありましたんで。
ちなみに現状十冊控えてます(哀)
夏休みは執筆作業で暮れそうです(この感想文は、2018年08月に書かれたものです)。

さて「ワルキューレ」ですが、最初だけ。
モヤッとしたのは表紙の初見だけで、後は怒涛の展開。
分厚かろうが、二段組だろうがサクッと読了。
全然時間稼ぎにならねぇじゃねぇーかッ!
女性車長も物語が進むにつれて、すんなり溶け込んで全く違和感なし。
そうなんです小説なんですからエンタメありきです。
リアリティだけを追い求めるなら戦記を読めばいい話。

敗軍の精鋭部隊に高性能新兵器を配備という、まあ、軍事モノで一番燃える設定。
さらにライバルには、共産党に恨みを抱く白系ロシア人という一癖あるキャラを据える。
高貴な生まれにして美形、策士にして戦車戦エース、このキャラデザ、まんまシャアですw
で、女性主人公なんで恋愛もチラホラと。
独ソそれぞれの主人公に対する悪役、敵ではなく、あくまで読者の嫌悪を一点に引きつける分り易い悪役として、独軍は親衛隊、赤軍は政治将校を配置。
まさにベタ、王道中の王道。
読者の琴線に触れそうな要素を地雷のようにばらまいてます。
勿論戦車戦の詳細な描写は圧巻。
中でも唸ったのは、戦いの前の入念な地形確認。
待ち伏せポイントはないか?戦車が通れる脇道はないか?
実際の戦闘以外の渋い描写に、バリバリ軍オタの俺も「へぇボタン」連打。

見所満載で内容はこんなにベタで読みやすいのに、何せ題材がニッチなもんだから軍オタ以外手に取らないというね。
実にモッタイナイ。MOTTAINAI

やっぱヒットさせようとするなら、最初に間口を広く取っとかないと。
でもなぁ~広ければ広いほど、浅く薄くなっちゃうんだよねぇ~難しいもんです。

水樹先生、レディコミの漫画家だとか。いやぁ~多才でらっしゃる。
小説も是非書き続けていただきたい。この一作で筆を擱くのはホントにマジで、、、
モッタイナイ。MOTTAINAI


血と硝煙と油の臭い漂う「ガールズ&パンツァー」
★★★☆☆