昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

豊臣政権の大蔵大臣『天下を計る』

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岩井三四二

 

ハイッ「長束正家」知ってる人?
、、、、、、。

簡単に言うと、豊臣政権の大蔵大臣ですね。
いやぁ俺もまさか、長束正家主人公の小説読むことになるとは。
やっぱ地味だもんね。
どうも戦国武将は派手な戦上手ばっかが持て囃されてて、内政官は扱いが軽い。

まぁ正直俺の印象も薄いし、戦国ファンの間でも、五奉行の中で三成のモブみたいな扱いですよね。
のぼうの城」じゃ、凄ぇ嫌な奴として描かれてたり(←おいおいアップ予定)
 
でも皆さん、よく考えてみて下さい。
天下人秀吉の金庫番を務めた上げた男ですよ、無能なはずがないッ!
岩井先生、よくぞ見出して下さいましたって感じ。

華々しい兵法や武勇とは無縁の、全編算盤弾いての金勘定。
正家同様、小説の内容も地味地味。
いかに前線へ大量の食糧・武器・弾薬を効率良く運べるか。
兵站のプロフェッショナル、旧日本軍にも欲しいぐらいの逸材です。
シビヤに数字を吟味するお役目ですから、不正や嘘偽りが大嫌い。
だから、、、自然と政権内に敵も多くなると。
ここいら辺は、三成と一緒ですな。

三成は勿論、豊臣政権オールスターキャストですから。
こんなにいっぱいキャラ出さなくてもいいんじゃね?みたいな。
利休なんかチョイ役もチョイ役、いるか?
で、皆、薄いッ
最近の歴史小説はキャラ立ちしてんの多いんで、このあっさり味が逆に新鮮です。
この薄味の中で、主人公の「正家」が良い感じに味付けされてて、地味なのにちゃんと主人公してるという、この絶妙なバランス。

そして豊臣秀長を悪役(仇役)に配するという奇手。
これには正直驚きました。
これまでの秀長像といえば、豊臣政権の良心、暴走する秀吉のブレーキ役というイメージでしたから。
九州征伐での兵糧横流し、不正蓄財の件は史実なんでしょうか?
軽く調べてみるに、岩井先生全くの創作ってわけではなさそう。
俺もかなりの戦国マニアを自称してるんで、読む歴史小説の出てくるエピソード、既知も既知なことが多いんですがこれは初耳でした。

旧主丹羽家との関係、文治派/武断派を越えた清正との腹を割った話し合い(三成には絶対無理)など、見所散見なれど、基本は金勘定、やっぱ地味。
九州、小田原、朝鮮、関ヶ原と歴史イベントもサラッと流れる感じ。
しかし、派手に脚色したりせず、素材の味を活かす本作の手法が「長束正家」という男には一番ピッタリなのかも。


地味王
★★★☆☆