昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

超ウルトラC本能寺『天主信長 我こそ天下なり』

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上田秀人著

 

また本能寺かッ!
そぉでぇす、また本能寺。
ネタもフリもオチも全部知ってる話なのに面白い、そう!それが「本能寺の変
戦国興味ない人ゴメンナサイ、置いて行きますw

もう尽きたろうと。パターンね、パターン。
もう出尽くしたでしょ?あらゆる手法はやり尽くし、最早新手のパターンが出てくることは皆無。

そんなふうに考えていた時期が俺にもありました

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いやぁ~~上田先生、参った参りました。
まさかこんな角度から切り込んでくるとはッ!!

「信長が本能寺で討たれる、実行犯は光秀」
SFだったら未来に転生とかもアリだけど、あくまで歴史小説なんでこの縛りは絶対。
史実と史実の合間、資料と資料の余白でいかに遊ぶか?
ココが歴史作家の腕の見せ所ですが、いやぁ~~上田先生、こう来ますかッ!?
ヤツを黒幕にって、マジかッ!?
過去にも考えついた作家さんはいるだろうけど、ホントに黒幕に据えちゃうんだもん。
ネタの斬新さは抜群、シチュエーション的にも無い話じゃない。
後は整合性だけですが、、、

勢いだけで読み進めるが、一旦立ち止まると「むむ?」となるのは事実。
動機付けや細部の詰めが甘い。
特に俺が突っ込みたいのは、信忠の処理が甘いってこと。
あの計画じゃあ、すぐ近くの妙覚寺にいる信忠どうすんの?
事情を知らない信忠の動きが読めないんで、それこそ計画自体が無茶苦茶になる可能性ありますよね。
、、、、、、。
ヤベぇヤベぇ、ちょっと言い過ぎました、これ以上突っ込むとネタバレしちまう。
それから動機も。
あまりに論理が飛躍し過ぎっつーか、「風が吹けば桶屋が儲かる」の途中がスッポリ抜け落ちてるっつーか。
他人を信じて、わざわざこんな博打に打って出るか?
あの黒幕なら、もっとリスクとリターンを冷徹に分析すると思いますけど。
ここいら辺が結構フワッとしてて、やや消化不良。

さらに重箱の隅をつつかせてもらうと、主役以外の脇の描写、特に明智光秀関連が雑。
桂川渡河後の光秀の台詞が序章と終章で違う、斎藤利三が「日向守どの」←普通に殿で良くね?
本筋に殆ど絡まない脇役扱いとはいえ、本能寺モノでここまで魅力のない光秀は初めてです。
まあコレは、俺が光秀ファンっつーのを多分に含んでますけど。

とは言え、この圧倒的に斬新な「本能寺の変」は、歴史ファンならば一読の価値あり。
作中、信長と一番絡む人物が竹中半兵衛というのも今までに無いパターンで、新鮮に読めました。
カリスマ的独裁者と、それが暴走したときのブレーキ役になる有能な側近。
ベストとは言いませんが、衆愚政治よりよっぽどマシな政体なのでは。
返す返す早世が悔やまれます。
と、その半兵衛の理念を受け取った、黒田官兵衛目線の姉妹編「天主信長〈裏〉 天を望むなかれ」も要チェックですな。


まだあるか本能寺金脈?
★★★☆☆