昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

I L♥VE TOKYO『家康、江戸を建てる』

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門井慶喜

 

TOKYO
域内人口、経済力共に世界一を誇り、日本の政治・経済・文化・人材、あらゆる物が集積する世界に冠たるメガシティ。
俺もその片鱗に住まう者として、愛して止まない大都市であります。
で、この街の歴史を遡っていくと、一人の偉大なる人物に出会うわけであります。

徳川家康

ねー。
ココの常連さんなら御存知の通り、俺、三成LOVEバリバリの西軍派なんで。
まあ言うてみたら仇敵ですよね。正直あんま好きじゃねぇし。「鐘銘事件」の件なんかとんでもねぇ糞親父だなぁって思ってますハイ。
でもね、やっぱその業績を顧みるに只者じゃねぇわけよ、伊達に天下獲ってないわ。

物語は小田原征伐、あの有名な連れションシーンから。
関八州やるよ」って、秀吉から無茶振りされるトコね。
小田原征伐の論功行賞と見せかけ、ライバルである家康の力を殺ぐために、本拠地である東海地方から関東への国替えを打診してきたわけです。
当然徳川家臣団は猛反対。
大幅加増とはいえ、当時の関東なんて超ド田舎ですから。
しかし家康、江戸に未来を見出すんですね。
ここいら辺の経緯をもっと詳しく書いて欲しかった。
何故あの時点で、ある程度発展している小田原や鎌倉ではなく、敢えてさらに僻地の「江戸」なのか?
百年以上前に太田道灌が築いた江戸城とは名ばかりの、砦に毛が生えた程度の古城があるだけ、一面葦に覆われた沼地の寂れた漁村でしかない「江戸」を何故敢えて選んだ???

この最大の謎をすっ飛ばし、早速街造り開始。
治水・貨幣鋳造・飲料水の確保・石垣積み・天守造築の全五章。
全く異なる分野のエキスパートを掻き集め、江戸の街造りという一大プロジェクトを立ち上げる家康の名プロデューサーとしての豪腕振りに圧倒される。
優れたリーダーの条件って、色々あると思うけど。
カリスマ性、決断力、包容力とかね。
でも、一番重要なのは、、、
有能な人材を見つけ出し、適材適所に配置して、その能力を百%引き出せる“人事力”ではないでしょうか。
信長や秀吉も凄いけど、いやはや家康公も半端ねぇ。旧日本軍も見習って欲しいわホント。
トップの構想を中間の技術者が把握し、噛み砕いて現場に伝え、如何にヴィジョンが形に成っていくか。
ここいらの流れは、コレ↓思い出しましたね。

ryodanchoo.hatenablog.comしかしまあ、歴史上に於ける民政家や技術者の扱いって、その業績に比して軽くね?
歴史の教科書で大書されるのは、いつも英雄豪傑、宗教家や芸術家ばっか。
人類の福利厚生、生活の向上という点では、圧倒的貢献度にも関わらずこの認知度の低さよ、マジ不公平だわ。
伊奈忠次知ってます?
利根川曲げた人ですよッ!?知らない?うん、俺も本作で初めて聞いた(哀)

悲しい哉その名は天下に轟いてなかろうとも、その業績は今日まで脈々と受け継がれているのです。
例えば水道橋。ドームの最寄り駅ですけれども。
この地名は、遙々多摩から引いてきた池の水を、江戸城内に運ぶ為の水道管が通った橋が
架けられたことに由来するとかね。
銀座・井の頭・青梅街道etc.etc
こんなにも彼らの業績が地名に残ってんだなあと素直に感動。
そして四百年経った今、あの寂れた漁村が世界一の大都市に変貌したわけですから。
大したもんだぜ実際、凄ぇよ皆、そして勿論家康公も。
流石にアンチの俺も、コレは認めざるを得ない。

こんな壮大な話ばっかじゃなくて、戦国時代と江戸泰平期の武士の気質の違いとか軽めの蘊蓄もてんこ盛り。
今で言う草食化現象が、既に江戸初期にも顕現していたというね。
あと予算と人の分捕り合いね、省庁間の派閥争いみたいな。
こういう話聞くと、バリバリ親近感湧くわ。四百年前とはいえ同じ日本人だってね。
本作を読んで東京が益々好きになったし、歴史に触れたことで、街歩きがさらに楽しくなりそうです♪

東京LOVE
★★★☆☆