昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

「本能寺」“ 後 ” からでもこの面白さッ!

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図書館で借りたハードカバー

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古書店で探し回った文庫

羽山信樹著

 

「羽山信樹週間」お付き合い頂きまして有り難うございました。

最終日の今回は御大との出合いの一冊、今日私の光秀像を決定付けた一冊です。

以下2010年に書かれた感想文です。

 

タイトルで即決。
ちょっとでも歴史かじってる人間なら、すぐさま「本能寺の変」~「山崎の合戦」を思い浮かべるのでは。
、、、思い浮かべない?マジで??
じゃあ、全然解んねぇと思うけど、えぇ~~と、我慢して読んでw
日本史で一番テンション↑↑↑なトコだから。
つーわけで、ワクワクして読み始めたわけ。

>●天正十年六月二日

光秀が、腹心斎藤利三と共に坂本城に戻り着いたのは、その日の酉の刻(午後六時頃)過ぎ。
>その日の酉の刻(午後六時頃)過ぎ。
>酉の刻(午後六時頃)過ぎ。
>午後六時頃、午後六時、、、午後六時ッ!?

信長もう死んでんじゃねーーかッ!!

そう!「本能寺の変」が終わったところから始まってやんの。
出だし読んでたら、借りてなかったわ。
これ、レストランでフルコース頼んだら、いきなりデザート出てきたみたいな。
メイン食わせろと。
ただ!このデザート、、、バリウマなのでした♪

明智光秀
これ程後世にて、評価の分かれる人物も珍しい。
日本史上最大の裏切り者か、あるいは悲運の名将か。
俺は結構好きなんだよね~~
好きっちゅうか何ちゅうか、憐憫ちゅうか、同情ちゅうか、MOTTAINAIちゅうか、シンパシーを感じるちゅうか、、、
何とも言えぬ複雑な心境になる。
でも漫画なりドラマで光秀の扱いが悪いと、「そうじゃねぇだろ!」ってなるんで、やっぱ好きなんかな?
つっても、仇の信長も秀吉も好きだけどね。

帯に人間光秀を活写するとあるが、まさに素晴らしい描写。

歴史モノにありがちな罠で、主人公のアゲ補正があざといっつーのがあって。
ここ数年の大河とか。マジでやり過ぎ。
この点本作は、きっちりバランスを保っている。
戦国屈指の教養人であり、天才戦略家であり、良き領主であり、良き夫であり、良き父である。
これ程の男でありながら、追い詰められ謀反を企てる。
本壊を遂げるも己の読みの甘さから、信じていた盟友に次々と見限られ、破滅へと真っ逆さまに堕ちていく。
強さと弱さ。
この両面を描き切れてなければ、キャラクターに命は宿らない。人間の深みは伝わらない。

そして、これを機にひたすら天下へ突き進む秀吉との対比。
その昇竜の如き勢いと、光秀の茫然自失の様。
否応なく哀愁を誘う。
そんな光秀を最後まで支え続ける、忠義の家臣と家族の愛情。
不覚にも落涙。
やはり相変わらず“ベタ”に弱い。

それともう一つ本作を語るに外せないのは、「裏結崎」の存在。
「裏結崎」とは光秀お抱えの能一座にしてその実態は、能の所作を極限まで高め、それを武術に応用し、その身体能力をもって、闇の任務(暗殺・諜報・工作)にあたっているという設定。
これが、かっちょいいのなんの。
伊賀越えを図る徳川家康を暗殺すべく放たれた、「裏結崎」手練八名。
対するは、家康を護衛する服部半蔵率いる伊賀衆。
奇術・妖術の類まで飛び出す、大忍法合戦が繰り広げられる。
目の前で映像が映し出される様なアクション描写。シビれた!
俺は結構リアリティ重視派なんだが、エンターテイメント全開っつーのもアリかも。
ここだけ二回読んじゃったぜ。

それこそ「本能寺の変」~「山崎の合戦」なんて、戦国オタの俺からすれば、ネタ・フリ・オチ全部知ってるわけ、それでこんだけオモロイんだから。
ああ、むしろ戦国オタだからこそか。
読者置き去り状態でスマン。つーか、ここまで読んだの?偉いw


連荘で五つ星は(今作読了二週間前に『永遠の0』を満点評価)インフレ懸念&終盤気が滅入る展開なので
★★★★☆