昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

北極海で燃え上がる、日独熱い男たちの友情『氷海のウラヌス』

f:id:ryodanchoo:20200727184623j:plain

赤城毅

 

帯の

f:id:ryodanchoo:20200727184734j:plain

面白い。
あまりに
面白すぎる!

は、流石に煽り過ぎ。
でも面白いのは確か。
開戦直前の国際情勢と、多少の軍事知識は要求されるが。
間口やや狭。
軍オタ以外スルーかね~勿体無ぇな。

1941年 昭和16年晩秋。
北極海を西進する独仮装巡洋艦ウラヌス。
その艦上には、密命を帯びた二人の日本人の姿があった。
彼らの任務は、もし太平洋にて日米の戦端が開かれた場合、ドイツの対米参戦をヒトラーに確約させること。
手土産は日本海軍の秘密兵器「九三式酸素魚雷」!
はたしてウラヌスは厳重な警戒網をかいくぐり、ドイツ勢力圏の港に辿り着くことが出来るのか?

この手の日独の秘密連絡モノは「Uボート」と相場が決まっているのだが、今作では民間商船に偽装した「仮装巡洋艦」という設定。
おお、新しや。

しかし、それ以外はベッタベッタ、王道中の王道。
少年漫画みたい(←褒め言葉です)
初めは反目しあう日独の軍人達。
ドイツ人艦長は、黄色人種を猿と蔑む取ってつけた様な人種差別主義者。
しかし厳しい航海を続けるうち、最後にはお互いを認め合う“戦友”になっていく。
まさに、男惚れの世界。
敵が徐々に強くなっていくのもおあつらえ向き。
乗組員の反目→北極海の過酷な自然環境→ソ連の田舎海軍→欧州最強ロイヤルネイビー
出来過ぎてるぜ!

歴史を題材に採っている以上、結末は決まっている。
真珠湾奇襲後、ヒトラーアメリカに宣戦布告する。
三国同盟」は参戦義務を規定していないので、ヒトラーのこの決断はちょっとした謎だ。
ソ連との「東部戦線」が膠着している現状で、また新たな強大な敵アメリカと事を構えるのはどう考えても無謀である。
しかしヒトラーは参戦を決意する。
この歴史のエアーポケットに、フィクションの絶妙な匙加減がねじ込まれる。

そして設定の妙と共に語らなければならないは、キャラクターの魅力。
勇猛果敢、冷静沈着、職業軍人としての誇り、戦友同志の絆、家族への愛情。
オンリーワンの人間がわざわざ危険な作業に志願したりと、ややヒロイックに過ぎる場面も鼻に付くが、出てくるキャラ出てくるキャラ全てがまあぁぁ~~イチイチ惚れる。
熱いものが込み上げてくるのを抑えたのは、二度三度では足らない。

やはり俺はベタに弱いらしい。


映画化希望w
★★★★☆