昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

しみじみとホッコリ『ペンギン・ハイウェイ』

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森見登美彦

 

忘れた頃にやってくるこの無いパターン。

「面白くないけど好き」

逆パターンはそれこそ何冊も出会ってきた。
「メチャメチャ面白いけど好きになれない」作品たち。
例えば、湊かなえ先生の『告白』なんかもろこのパターン。
メチャメチャ面白かったにもかかわらず、あまりの読後感の悪さに、『告白』以来湊先生のミステリーは一作も読んでません。

さて『ペンギン・ハイウェイ』です。
面白くない、、、面白くないとはちょっと違うか、、、ニュアンスが難しいんだけど。
退屈?マッタリ?う~~ん、イマイチぴったりな言葉が見付からん。
まぁ、要は小学生の日記読んでるみたいな感じ。
折角の謎が謎を呼ぶSF?設定は、こう言っちゃ何だがオマケみたいなもん。
メインはあくまで普通の生活、小学生の日常。
かなり賢い設定だが、所詮小学生は小学生。平易な文章で日々が淡々と綴られる。

だがそれがいい!!

ほのぼの。しみじみとホッコリ。
自分が幼かったときの気持ちがこんなに鮮やかに甦るとは。
と同時に大人の視点から読んでるんで、主人公「アオヤマくん」がまあぁ可愛らしい。愛おしくてタマラン。
「俺の年齢だったらこれぐらいの息子がいてもおかしくないんだなぁ、こんなに素直で賢い息子がいたら、俺ならどうやって向き合えるだろう?」

↑こんな気持ち、こんな気持ちになろうとはッ
正直俺、子供苦手なんでw まさか文章でここまで引っ張られるとは意外も意外!
幼い頃の瑞々しい思い出と年相応の親としての視点。
穏やかに懐かしい気持ちを抱きつつ平易で退屈な文章を読むという、まことに摩訶不思議なる読書体験であった。
面白いかと問われれば否、じゃあ嫌いかといえば、、、結構好き♪
何じゃコリャw
起承転結がカッチリした物語もいいけど、たまにはふんわりした雰囲気の文章をマッタリ読むのもいいかも。

あと思ったのは、社会を構成する大人の一員として、子供の知的好奇心は大事にしてあげたいなぁということ。
子供がいるわけでも教育産業に従事してるわけでもないので、特に何が出来るっつーわけでもないのだが。
子供の何故?どうして?に大人として優しく、そして真面目に接してあげたいなと。
やっぱさぁ~今の教育システムって、子供の個性や才能を潰してしまってる面が多々あると思うんだよね。
もったいないぜ。MOTTAINAI


森見先生、京都以外でもイケるじゃないですか
★★★☆☆