昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

葉真中版 ゴールデンカムイ 『凍てつく太陽』

葉真中顕著 当ブログエース、「魂の抉り屋」葉真中先生の御登場です。 『絶叫』では、堕ちていく一人の女性を通して人生の意味、本当の幸せを問いかけ、 ryodanchoo.hatenablog.com『ブラック・ドッグ』では、食物連鎖の頂点に傲慢に君臨する人間たちへ生命…

『信長の原理』とは?

垣根涼介著 書店でこのタイトルと装丁を見かけた瞬間、すぐにピーン!と来まして。 著者名を確認してやっぱりねと。 ryodanchoo.hatenablog.comまさか、あのイメージドンピシャの垣根光秀に再会出来るとは。 これは否が応でも期待が高まります。 勿論タイト…

スローライフ万歳『聖なる怠け者の冒険』

森見登美彦著 森見先生、お久し振りです。いやぁ~~相も変わらずの森見ワールドで。もうね、故郷に帰ってきた様な心持ちです。先生の作品は毎回そうですが、今回も主人公と俺との親和性、所謂一つのシンクロ率が半端無ぇ。「小和田君」、とても他人とは思え…

○○○とは何者だったのか? 『黒南風の海「文禄・慶長の役」異聞』

伊東潤著 「文禄・慶長の役」異聞 この題名を認識した直後には、もう手に取っていた。 そして手に取った数秒後には、相反する二つの感情が沸沸と湧き上がってきていた。 期待と不安である。 『武田家滅亡』では、相当楽しませて頂いた。 ryodanchoo.hatenabl…

北極海で燃え上がる、日独熱い男たちの友情『氷海のウラヌス』

赤城毅著 帯の 面白い。あまりに面白すぎる! は、流石に煽り過ぎ。でも面白いのは確か。開戦直前の国際情勢と、多少の軍事知識は要求されるが。間口やや狭。軍オタ以外スルーかね~勿体無ぇな。 1941年 昭和16年晩秋。北極海を西進する独仮装巡洋艦ウラヌス…

男で育児経験がない俺でも、かなり応えました『八日目の蝉』

角田光代著 角田先生には、前回の対戦で打ちのめされたんで。 今回代表作いかせて頂きました。 ryodanchoo.hatenablog.com 愛人宅に侵入し、赤ん坊を誘拐してしまった野々宮希和子。 全国を逃亡しながら、自分の娘のように愛情を注ぎ育てる希和子だったが、…

最高のカタルシス『鋼鉄の叫び』

鈴木光司著 「リング」シリーズ読んで以来、実に十数年振りッの鈴木先生と再戦。こうやって、感想文綴るようになる遥か昔、恐らく人生で初めて読んだ小説ではなかったろうか。いやぁ~お久し振りです。 テレビ局のプロデューサー雪島忠信は、特攻隊を題材に…

国家公認の処刑執行者『トリガー』

ウーマンラッシュアワーの村本さんですか? 板倉俊之著 インパルス板倉さんの作家デビュー作品ですね。 芸人がどれ程の作品書き上げてんの?サバゲーが趣味ちゅーのは既知だが、ガンアクションもの!?安直だなぁ~~第一印象こんな感じ。正直、意地悪い気持…

胸が締め付けられます『アンチェルの蝶』

遠田潤子著 場末の居酒屋主人藤太、漫然と灰色の日々を送る彼の元にある日、幼馴染みの娘が現われた。 うらぶれた中年男と小学生の女の子の奇妙な同居生活が始まった、、、 冴えない中年男のところに転がり込んできた女の子。まあ、よくあるシチュエーション…

『光秀の定理』とは?

垣根涼介著 歴史小説初挑戦の垣根先生が描く、織田家仕官前、歴史上まだ無名の明智光秀。 面白いッ! 書店に並んでる時からそのタイトル、桔梗の旗印を思わせる水色の美しい表紙にこれは面白そうと目星を付けておいたのだが、先日遂に図書館にて発見。ありが…

Ghost of Tsushima 超面白そうですね♪『異国合戦 蒙古襲来異聞』

岩井三四二著 定番の歴史枠。今回は戦国でもなく幕末でもなく、「元寇」です。 日本史の一大スぺクタルの割に、あんまフューチャーされてないよね「元寇」読者諸賢におかれましても、神風で船が沈んだぐらいしか知らねぇんじゃね。っつーわけで、良い機会だ…

パイロットではなく整備兵視点の特攻『翼に息吹を』

熊谷達也著 「特攻」 この言葉を噛み締めるとき、俺も日本人ある以上、相反する様々な思いが駆け巡る。 驚愕、同情、憐憫、尊敬、感謝、恐怖、嫌悪、、、 究極の自己犠牲の美しさと、人間の命を機械の部品のように使い捨てた醜悪さが同居しつつ迫り来て、戦…

対立と和解の物語『64(ロクヨン)』

横山秀夫著 超メージャーな大ベストセラー決め打ち。映画化ドラマ化、数々の受賞歴、アマゾンに於ける絶賛。否が応にも高まる期待、上げまくるハードル。 昭和64年に発生した誘拐殺害事件を巡り、県警内部で刑事部と警務部の激しい派閥争いが勃発、広報部の…

凋落の新選組『一刀斎夢録』

浅田次郎著 『一路』で ryodanchoo.hatenablog.com「2015 今年の一冊大賞」を獲った浅田先生と新選組三番隊長・斎藤一、最高の食材を希代のシェフが調理して不味い料理が出来るわけがないッ! うん確かに美味い、美味いんだが、、、読書も十年続けてると、最…

小笠原るるぶ『人生教習所』

垣根涼介著 キャッチーなタイトルに、この表紙の写真。くぅ~~高まる♪ 「人間再生セミナー 小笠原塾」 謎の募集広告で小笠原に集まった無気力な東大生、すぐカッとなる元ヤクザ、気が弱い女性フリーライター、その他セミナー参加者たち。 小笠原の大自然の…

超骨太『神の国に殉ず 小説 東条英機と米内光政』

阿部牧郎著 書架に鎮座まします圧倒的存在感。上下巻合わせ九百項超、俄を寄せ付けない超骨太な内容。今まで躊躇うには充分過ぎる手強さ。加えて、東条英機という極めてデリケートな素材。歴史を扱った小説、特に近代史モノで、保守/リベラル問わず著者の思…

主人公誰?の川中島『吹けよ風 呼べよ嵐』

伊東潤著 御存知「川中島の戦い」ですね。キモは主人公が信玄でも謙信でもなく、北信濃の国人「須田満親」っつーところ。っつーか、誰だよッ!?って、ウィキで補完したら、意外と大物じゃん。 川中島最大の激突である第四次をメインに、全五回の戦いをガッ…

「魂の抉り屋」葉真中先生が描く介護の実態『ロスト・ケア』

葉真中顕著 今最もお気に入りの作家さん葉真中先生ご登場、今回で三作目かな。 過去二作でも相当にエグられたんで、 ryodanchoo.hatenablog.com ryodanchoo.hatenablog.com今回も覚悟の読書です。 何せ葉真中作品は、読後のダメージの引っ張り具合が半端ない…

表紙怖ッ『成功者K』

羽田圭介著 羽田作品、読了三作目にして確信。 コレが、コッチの方がッ、羽田先生の作風なんですね。 何て言うんでしょう、モヤモヤ感雁字搦めっつーか。 『盗まれた顔』みたいな普通っぽい小説?の方がむしろ搦め手で、 ryodanchoo.hatenablog.com『コンテ…

「本能寺」“ 後 ” からでもこの面白さッ!

図書館で借りたハードカバー 古書店で探し回った文庫 羽山信樹著 「羽山信樹週間」お付き合い頂きまして有り難うございました。 最終日の今回は御大との出合いの一冊、今日私の光秀像を決定付けた一冊です。 以下2010年に書かれた感想文です。 タイトルで即…

読み返すに、やっぱ四ツ星じゃね?『是非に及ばず』

羽山信樹著 引き続き「羽山信樹週間」継続中です。 感想文書いた時期と当ブログにアップした順番に差異があり、記述にズレが生じてしまい申し訳ありません。 >信長に敗れたといえば通常、浅井、朝倉、武田辺りがいの一番に思い浮かぶところ。 勿論羽山先生に…

羽山御大が描く切な過ぎる本能寺『夢狂いに候』

羽山信樹著 「本能寺の変」そう、また本能寺。しょーがねぇっス、だって日本史で一番ドラマチックな日なんですもの。これからも何かにつけ絡んでくること必至。 でも今回ちょっと違うのは、主役が信長でも光秀でもないこと。歴史の大河に現れた、織田信長と…

今週は「羽山信樹週間」です『第六天魔王信長』

羽山信樹著 ハイ、御存知織田信長です。 吉法師~桶狭間~金ヶ崎~姉川~小谷城~長篠~本能寺という流れ。 ある程度の戦国好きなら当然、全エピソード既知も既知なのだが、羽山御大がいかにしてこの日本一有名な歴史上の人物の人生を描きだすのか?今作の要…

奇想天外ッ羽山流剣豪小説『邪しき者』

羽山信樹著 上中下三巻計、千項弱の大長編ようやく読了。 まさに奇想天外にして気宇壮大、濃厚な読書体験となった。 宿年の大敵、豊臣家を大阪の役に屠り、もはや徳川幕藩体制は磐石と思われた三代家光の御代。 火種は内にあった。 将軍家と御三家筆頭尾張藩…

織田軍の圧倒的物量作戦『滅びの将-信長に敗れた男たち』

羽山信樹著 副題の通り、信長に敗れた男たちの短編連作。別所長治、荒木村重、吉川経家、松永久秀、清水宗治の五人。一見するに中国戦線偏重の印象。信長に敗れたといえば通常、浅井、朝倉、武田辺りがいの一番に思い浮かぶところ。勿論羽山先生に限って洩れ…

人斬り十名の競演『幕末刺客列伝』

羽山信樹著 流石ッ鬼才羽山信樹ッ題材が戦国武将から幕末の剣客に変わっても(羽山作品は以降続々アップ予定)、其の筆の勢いたるや全く衰える気配無し。まあ、作品発表の時系列的に言うと、こっちのが先なわけだが。 題名の通り、幕末の刺客・剣客十人のオム…

飽食の果てに『震える牛』

相場英雄著 二年前中野で発生した強盗殺人事件の継続捜査を担当することになった捜査一課継続捜査班のベテラン刑事、田川信一。初動捜査では外国人犯罪との見立てだったが、田川の地道な捜査により事件の本質、流通・小売業界の闇が徐々に明らかになっていく…

ド長文Ⅱ『太平洋の試練 ガダルカナルからサイパン陥落まで』

イアン・トール著 村上和久訳 著者入魂の太平洋海戦録三部作第二弾。 ryodanchoo.hatenablog.com 今回は半年の消耗戦で日本が継戦能力を殺がれた「ガダルカナルの戦い」から、その敗北により太平洋戦争での敗戦がほぼ確定した「マリアナ沖海戦」まで。 充分…

『治部の礎』の上に築かれたもの

吉川永青著 御存知、石田治部少輔三成。ココの常連さんならひょっとしたら、頭の片隅に引っ掛かってる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれないと期待したりしてみっちゃったりなんかして。そう、俺石田三成大好きなんです。 っつーか、アイコン見たら一…

タイプです『Qrosの女』

誉田哲也著 ファストファッションブランド「Qros」のCMに登場する謎の美女を巡る、芸能界の闇。週刊誌の芸能記者が見た彼女の正体とは? 序盤は世間を騒がす「Qrosの女」とは、一体誰なんだ?↑これだけでグイグイ引っ張りますが、中盤であっさりネタバレ。オ…