昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

読み返すに、やっぱ四ツ星じゃね?『是非に及ばず』

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羽山信樹著

 

引き続き「羽山信樹週間」継続中です。

感想文書いた時期と当ブログにアップした順番に差異があり、記述にズレが生じてしまい申し訳ありません。

 

>信長に敗れたといえば通常、浅井、朝倉、武田辺りがいの一番に思い浮かぶところ。
勿論羽山先生に限って洩れはなし、別作『是非に及ばず』にて言及されている由。当然所蔵しているので、いずれ此処でも拙い書評を公開することになるであろう。

ryodanchoo.hatenablog.comハイッ、つーわけで約束通り『是非に及ばず』です。
四百項超、全十二章。
内訳は、
平手政秀、織田信行今川義元斎藤龍興六角義賢朝倉義景浅井長政足利義昭山中幸盛波多野秀治武田勝頼、そして明智光秀と。

信長と敵対或いは深く関わった人物を通し、日本史上最大の巨星、戦国の風雲児「織田信長」を浮き彫りにしようという趣向。
『滅びの将-信長に敗れた男たち』が、中国戦線限定のマイナー路線だったのに対し、今回は戦国に多少興味のある方なら誰でも御存知の超有名エピソードがズラリ。
それだけにどうしても過去読んだ作品と比べてしまう。
例えば、、、
六角義賢(殆ど光秀だけどまぁ、長光寺城攻めっつーことで)は、
垣根涼介先生の『光秀の定理』近日アップ予定。
武田勝頼は、

ryodanchoo.hatenablog.com明智光秀に至ってはそれこそ何冊も読んできたが、羽山作品との出会いでもあった、

『光秀の十二日』明日アップ予定。
等々。
比べる作品がどれも相当のお気に入りなもんだから、相対的に今作の評価が厳しくなってしまう。
そもそも長編と短編連作を比べること自体フェアじゃないんだが、こればっかりはしょうがない。
いくら四百項超とはいえ、特濃エピソード全十二編を語りつくすには少な過ぎる。

それからオムニバスの宿命、当たり外れ問題。
例えば今川義元の章。
死を目前にして生を実感し歓喜するという一捻りはあるものの、基本的にはありきたりな凡将描写。とても羽山御大の筆とは思えん。
六角や鹿之介も印象が薄い。

そして全体の統一感の無さ。前半は比較的信長中心だが、後半まるで空気。
タイトルが『是非に及ばず』なのに、「是非に及ばず」の台詞シーンが無いとかマジかッ!?
そうそう光秀の章もまんま『光秀の十二日』のダイジェスト版だったし。
もうちょっと人数絞って、「滅びの将」みたいな纏まりを出せれば良かったかと。

文句ばっか垂れてっけど、つまんないわけじゃないかんね。
正室帰蝶との夫婦愛や、足利義昭が将軍の器に非ずと気付きながらも、最後まで忠義を尽くす幕府衆の奮戦ぶりは感涙もの。
巻末の風野真知雄氏の言を借りるなら、
>遥か四百五十年も前の人物が、突如として息を吹き返し、現代に躍動したとき、われわれは肝をつぶし、瞠目して感嘆するのである。
そのとーーり!
リアリティ臨場感。作品にのめり込み本当に感動しているとき、文章を読んだ瞬間、今まさにその描写が眼前で繰り広げられているような錯覚に呑まれることが今作でも幾度となくあった。
伊達にマイフェバリット作家、「今月の二冊」ナンバーワンエースの看板しょってないぜ!

だ・け・ど。
ハッキリ言ってしまえば読む順番。
「滅びの将」や『光秀の十二日』より前に読んでれば余裕の四ツ星なんよ。
だからこそ、だからこそ、だ・か・らこそッ
今回は断腸の思いで厳しく採点させていただきます。


御大時代モノで初の
★★★☆☆