羽山御大が描く切な過ぎる本能寺『夢狂いに候』
羽山信樹著
「本能寺の変」
そう、また本能寺。
しょーがねぇっス、だって日本史で一番ドラマチックな日なんですもの。
これからも何かにつけ絡んでくること必至。
でも今回ちょっと違うのは、主役が信長でも光秀でもないこと。
歴史の大河に現れた、織田信長という“巨大な渦”に巻き込まれる“ちっぽけな泡”の物語。
軸は二人。
マカオ生まれの宣教師通訳「又次郎」と、勤王の志篤い京の地侍・山城衆の「磯谷隼人」
この二人の若者の友情と葛藤、そして信長と関わることによって引き寄せることになってしまう数奇な運命を描く。
いや~~羽山先生、ドSだわ。
これ程の過酷な宿命を背負わしますか?自分が生み出したキャラクターに。
前半やけにまったりしてるなぁと思いきや、後でブッ壊す為にせっせと幸せを演出するとは、、、
キャラが決断する度に、やめろおおぉぉぉーーーそっちに行くんじゃないッ!つって心の中で絶叫しながら読んでたわ。フィクションだっつーのw
とどのつまり、誰がどうあがこうと時限爆弾の設定時刻は変更出来ない訳で。
天正十年(1582) 六月二日
全キャラクターがその破滅に向かって、吸い寄せられるかの如く坂道を転がり落ちる様は、何と表現すればいいのか、、、
「本能寺の変」
散々使い倒されたネタでありながら、まだまだシャブれるというね。
朝廷の権威を何としても維持したい神道勢力、キリスト教の布教を阻止したい仏教勢力、二つに割れるキリスト教勢力(武力を誇示しながら強引に布教を推し進めようとする強硬派と時の権力者に取り入って着実に布教していこうとする穏健派)
この宗教闘争を背景に、天正遣欧少年使節によってローマに送られたとされる秘宝「安土山屏風」をキーアイテムとして「本能寺の変」の真相が、、、今ッ炙り出されるッ!
脇ながら羽山先生の光秀像は相変わらずドンピシャ。
出雲阿国の人生を達観した不思議な魅力も作品に華を添える。
「いやぁ、日本史って本当(ほんっとう)にいいもんですね~」
安定の四ツ星製造機
★★★★☆