昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

読書歴十年、読了三百冊の頂点『流され者』

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羽山信樹著

 

祝ブログ開設より百記事達成ッ

っつーわけで、記念すべき百記事目は、我が生涯の一冊『流され者』です。

この作品紹介したくて、ブログ始めたようなもんですから。

七年前の感想文ですけど、疾走ってます、筆が疾走ってますッ

 

-文句無しッ 本年No.1-

-羽山信樹デビュー作にして最高傑作-

-痛快娯楽時代劇の頂点-

これが、これがッ、絶版ッ!?
なんでなんでよ?何やってんの??出版業界は???
日本文学界の一大損失也。

どんでもない奴、どんでもないヤツに出会ってしまった。
これから先もずっと読書は続けると思うが、、、
多分活字の世界では、彼以上のキャラクターに巡り合うことはもうないと思う。
それ程の男よ。

壬生宗十郎(みぶそうじゅうろう)

本作の主人公である。
古典・言語・医学・土木建築・造船・戦略戦術・心理学・工学・化学はては、性技、博打に至る迄、あらゆる分野に精通した天才的頭脳。
手練の伊賀者五十名を軽々と斬り伏せる圧倒的剣技。
誰もが息を嚥むほどの超絶的な美貌。
坂本龍馬の親友にして、新進の開明論者。

「暴虐の紳士」 
「高潔なる外道」
大望の狂信者」

う~~~ん。
何と説明すれば良いのか。

「饒舌なゴルゴ13」w
「慇懃な範馬勇次郎」w
「性欲絶倫の古畑任三郎」w

「ハンター」のヒソカ、『シグルイ』の伊良子清玄、『ベルセルク』のグリフィス、etc、、、
似てるキャラは次から次に思い付く。
そのどれとも似ているし、そのどれとも違う。
あの特濃キャラ「真っ黒い鈴木先生」こと『悪の教典』のハスミンですら、壬生宗十郎の前ではそのイロを失う。
いや~~どんでもない奴、どんでもないヤツに出会ってしまった。

時は幕末、流刑の地八丈島に、最高権力者島役人として宗十郎が赴任するところから物語は始まる。
皆さん、幕末歴史の渦の中心は京都だと思ってるでしょ。
違うんです、実は、八丈島だったんですッ
勤王/佐幕、攘夷/開国、、、
ノンノンノン、実は、幕末は親壬生か反壬生かで動いていたんですッ
薩長同盟大政奉還も奴の、ヤツの絵図だったんですッッ
以下歴史上の人物の陣営分けをサラッと紹介。

親壬生陣営
御存知幕末のスーパーヒーロー坂本龍馬
全国の博徒・侠客十万の私兵団「流され者連合」の長、幕末の大親分大前田栄五郎
この親分がまた渋い渋い。
まさに任侠を体現したキャラ。あの清水の次郎長も子分なのだ。
その他倒幕派志士は概ね壬生派。

反壬生陣営
幕末三舟の、、、つっても筆頭の勝海舟は、敵か味方か第三勢力の様な動きを見せるので、高橋泥舟山岡鉄舟の義兄弟が宗十郎終生の宿敵として配置される。
なんとしても宗十郎の野望を砕く、滅びゆく幕府に最後まで忠義を尽くす、この兄弟の行動原理は只この二点のみ。
この二人がねぇ、チャキチャキの江戸っ子でまあぁ格好良い。
勿論頭も剣も滅法キレるときた!

第三勢力
先程の勝海舟と幕閣一の切れ者小栗上野介
当然の如く共闘ではなく、それぞれ単独で暗躍中。

これら歴史上の人物に加え、宗十郎の用心棒達、高橋伊勢守配下の伊賀衆、八丈島に流されて来た様々な背景の流人達が入り混じり、南海の楽園で大バトルッッ
将に、鬼才羽山信樹という電子レンジに「幕末」と『LOST』と『プリズン・ブレイク』と『バトル・ロワイアル』をぶち込んで、超高熱&超高圧でチン!したみたいな作品なのですッッッ

ホント何で絶版なの?メチャメチャ面白いのに。勿体無ぇよ。
歴史、アクション、ミステリー、恋愛、官能、人情。
それこそSF以外、娯楽小説の要素が全部ある。
アクションに唸り、ベタベタの江戸人情に泣き、エロ過ぎる性描写にちょっとヒクw
そうエロ過ぎる性描写に最初は引いたとしても、それを丹念に重複し究極の純愛にまで高める様に、ある種文学の崇高さ、深遠を垣間見たと記すは過言であろうか。

角川のね、映画にね、なる予定だったらしいのよ。
ポシャったみたいだけど。
何かモメたんかな~~
巻末のあとがき、羽山先生のウキウキ振りを読むにつけ痛々しい。
ホントならトントン拍子で大人気作家だったろうに、、、

もう二度と新作、狭い日本を飛び出して世界で活躍する宗十郎の活躍が読めんとは、、、
一読者、羽山作品の大ファンとして本当に残念です。

シグルイ』の山口貴由先生が漫画で、羽山先生の意志を受け継いでくれんだろうか。
もうね、これは夢です。願望です。


多摩地区の「ブックセンターいとう」を駆けずり回って集めた全六巻
俺の宝物です
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