昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

国家公認の処刑執行者『トリガー』

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ウーマンラッシュアワーの村本さんですか?

板倉俊之著

 

インパルス板倉さんの作家デビュー作品ですね。

芸人がどれ程の作品書き上げてんの?
サバゲーが趣味ちゅーのは既知だが、ガンアクションもの!?安直だなぁ~~
第一印象こんな感じ。
正直、意地悪い気持ちから手に取った次第。
平凡な単語の選択、固有名詞の乱用、練り込まれていない文章、ありきたりな設定、先の読める展開。
ハッキリ言って粗い。
粗い、、、が、面白い!

>東京都新宿駅――。鳩の糞を被った時計の針は、すでに午後九時七分を指している。

一行目で(おおッ!)という期待感。ザクザク読み進めた。
練り込まれてない文章ということは、裏を返せば読み易いちゅーことで。

近未来の日本。
あらゆる政治課題を迅速に処理する為、日本は議会制民主主義から国王制へと移行していた。
犯罪発生率の増加に業を煮やした国王は、ある法律を制定する。
『射殺許可法』
志願者の中から国王と性格パターンが類似した者を選出し、拳銃を携帯させ、自らの善悪基準の判断で自由に発砲・射殺を許可するという法律。
政府公認の処刑執行人、彼らは『トリガー』と呼ばれた。

今の世の中。
皆イライラカリカリ来てんでしょ?
ホント、マナー・エチケット・礼儀礼節はどこいった?って感じで。
満員電車で新聞をおっ拡げて読むオッサン、海や山に平気でゴミを捨てる観光客、イジメっ子、高圧的な職質警官、、、etcetc
“確実に刑法に触れた犯罪者”だけではなく、こういうグレーゾーンの人間も容赦なく眉間に風穴が空いていく。
不謹慎ではあるが、怒涛のカタルシス

元来自分も「犯罪には厳罰を」が信条である。
なので、精神鑑定だの、少年法だの、死刑廃止だのと加害者の人権ばかりを謳い上げる一部勢力に対してはいつも苦々しい感情を抱いていた。それも大きい。
この核心について波長が合わなければ、全く作品に入り込めないと思う。

しかし悪党を吹っ飛ばして爽快感を得るだけでは、小説として何とも底が浅い。
当然生命倫理の問題を絡めてくる。
「いかに悪人とはいえ、問答無用に命を奪ってよいのか、彼らにも家族や愛する人がいるだろう」
この問題にトリガーと射殺された者の遺族はどう向き合うのか?
命とは?正義とは?

都道府県にトリガー一名という設定。
主に関東圏のトリガーがオムニバス形式で綴られる。
各話の展開が簡単に予想出来る、国王の性格パターンに沿って選出されたトリガーなのに個体差が大きい、これだけの法律にも係わらず運用が極めて杜撰等、突っ込み所はそれこそ盛り沢山。
しかし話の勢いはフルスロットル、読ませる。
う~~~ん、悩ましいね。
素直に褒めたいんだけど、やっぱ粗い。が、貶すにはよく出来てる。
作家が本業じゃない人の作品を軽々しく認めたくないっつーか、逆に、デビュー作でここまで書けんのは凄ぇ!なのか、、、う~~~ん、悩ましいね。


オムニバスの宿命、玉石混交、、、っつーわけで逃げの
★★★☆☆