昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

Ghost of Tsushima 超面白そうですね♪『異国合戦 蒙古襲来異聞』

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岩井三四二

 

定番の歴史枠。今回は戦国でもなく幕末でもなく、「元寇」です。

日本史の一大スぺクタルの割に、あんまフューチャーされてないよね「元寇
読者諸賢におかれましても、神風で船が沈んだぐらいしか知らねぇんじゃね。
っつーわけで、良い機会だから俺もガッツリいっとこうかなと。いつも戦国ばっかじゃ芸がないんでね。

主人公は、「竹崎季長
皆も歴史の教科書とかで一度は目にしたことあんでしょ?写真見て、この人この人。

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ホレ、右端の騎馬武者ね              ↑↑↑

この絵巻物書かせた人物こそ文永・弘安両役で活躍した肥後の御家人竹崎季長」その人なのである。
季長が絵巻物を後世に残してくれたおかげで、中世日本の一大事「元寇」を文字だけでなくヴィジュアルイメージとして捉えることが出来ると、サンクス季長公。

竹崎季長の前線九州パートを軸に、執権北条時宗・御恩奉行安達安盛の鎌倉政治パート、元帝国に屈服した高麗の悲哀パート、そして皇帝フビライ・カーンの元本国パートと多元構成、双方向からの視点で文永・弘安の役を活写。

前線で敵と相まみえる恐怖、熾烈な政治・外交の駆け引き、上に立つ者の辛さ、蹂躙される被征服者の惨状。
様々な感情が渦巻く過酷な戦場譚だが、全編を通してカラッとした爽快さが貫く。
やはり、あらゆる困難に完全と立ち向かう主人公「竹崎季長」の存在がデカい。

やっぱ九州弁は良かねぇ~~「ばい」・「たい」言いよるだけで、何か一本気の熱か漢(おとこ)っち感じのするもんねぇ~~

戦場で勇敢に戦うだけでいいってわけじゃないのよ、良い鎧が欲しい、馬がいる船がいる、部下もいないと心細い、、、となると、先立つものはやっぱりお金。
文永の役の時の手柄を認めてもらいにわざわざ熊本から鎌倉まで直訴に行くんだけど、勿論旅費もかかる。頼みの綱の兄も親戚も冷たい。とにかく世の中金、金、金です。
いざという時の親戚縁者の頼りなさ。特に金絡みの時!
そして、そんな窮地に救いの手を差し伸べてくれる人の有難みね。

実は俺も過去、金が絡んだときの親族の冷淡振りと、こんな時でも助けてくれた友人の優しさを実感したことがあるんでね。
九州弁の愛らしさといい竹崎季長、遠い歴史を隔てた赤の他人とは思えません。
いやぁ~~何つーか、八百年前も今も、人の世の悩みっつーのはあんま変わらんね。

そうそう、戦闘シーン以外が結構面白いのよ。
鎌倉直訴までの旅の様子や、領地経営の苦労、妻妾に気を遣う有様なんか、日常生活が活き活きと描写されてて引き込まれたね。最初は日常パートなんかやってんじゃねぇッ!こちとらチャンチャンバラバラが読みたいんじゃって感じだったのに。

そして何より、元帝国に征服された高麗の悲惨さ。
いやホントマジで、海よありがとうだぜ。
もし日本も大陸と陸続きだったら、朝鮮半島みたく徹底的に国土を蹂躙されていたことでしょう。
超大国と陸続きっつーのは、とんでもない地政学的リスクだな。
もう一回言っとく、海よありがとう。
まぁそん代わり幕末期には、日本全周を防衛しなきゃなんなくなんですけど。
高麗パートも前線の兵士描写と政治描写に分かれてて、それぞれこれでもかと悲惨さ過酷さが描かれてます。
大量の船を造るため国土を禿山にされて、やりたくもない戦争に駆り出されて、最後は台風に巻き込まれて海の藻屑。悲惨過ぎる。
この元の時代に限らず、朝鮮半島が歩んできた苦難の歴史を鑑みるに複雑な気持ちになります。
最後にもう一回、海よありがとう。

で、神風神風、台風で勝ったっつってけど、それだけじゃないかんね。
そりゃ止めを刺したのは台風だけど、鎌倉武士の強さってのも勿論あったわけで。
上陸は許したものの、日本軍の頑強な反撃にあって橋頭保が築けず、船で待機してる間に台風がやってきたわけですから。
騎馬隊主力の蒙古軍精鋭ではないとはいえ、当時世界最強の元帝国を二度も撃退したわけですから、こりゃやっぱ愛国心の如きものを刺激されますわな。
禅宗の僧侶を経由した高度な諜報戦も描かれてて、おお日本強いじゃん♪って感じですよ。
まぁ、これ以降驕りを重ねていった結果が、先の大戦の大敗北の遠因になっていくわけですが、、、そして二度目の神風は吹かなかったと。

とはいえ、日本の武士が強かったのは事実ですから傲慢になることなく、かといって運だけで勝ったと卑下することもなく、冷静に歴史を俯瞰することが大切だと痛感します。
日本最初の国難といわれる「元寇」、これ以降幕末・敗戦と続き、今まさに第四の国難ともいわれています。
過去を振り返り歴史を学ぶことは、現代を生き抜く重要なヒントになるのでないでしょうか。
(あッこの台詞、前も宣ったな、、、)


やっぱ日本史って面白い
★★★☆☆