昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

My Favorite heroine『夜は短し歩けよ乙女』

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森見登美彦

 

「何て可愛らしい人なんだ!」

読者諸賢におかれましては、巷局所にておいて日々交わされている不毛なる議論、「三次元vs二次元」をご存知であろうか。
要は、生身の女性とアニメ・漫画等のキャラクターではどちらが魅力的かという正直身も蓋もない心底下らん論争である。
そんな事は考えるまでもないだろう、仰る通り。

では、小説上活字によって生成されたキャラクターに好意を寄せるとは此れ如何に。
生身が三次元、絵が二次元、では文章は一体何次元なのであろうか。

それにしても森見氏、我がストライクゾーンど真ん中にこれほどの直球を放り込んでくるとは、げに恐るべし。
肉眼で確認出来る容姿(ビジュアル)無くして、私のタイプ中のタイプをここまで具現化したその文才に乾杯。

では、そもそも彼女の何がそんなに気に入ったのか。
今時珍しい純真可憐なる黒髪の乙女というだけでも十分であるが、何より惹かれたのはその台詞、美しい日本語に他ならない。
言葉遣いの乱れが叫ばれて久しい昨今、乙女の喉から朗々と発せられる美麗且つ丁寧な、そしてちょっとばかりすっとぼけたその話しぶりは、春の小川のせせらぎもかくやと言わんばかり。
我が心、トキメキレーダーの反応は恋の大編隊をキャッチしたかの如くである。

折角だからこの場を借りて、世の婦女子に物申させて頂こう。

「英会話も宜しいが、先ずは美しい日本語を修めるが吉」

「てめぇに言われたかねぇわ」と的確なツッコミが聞こえてきそうではあるが、そこはほれ「貴方の仰りようには賛同出来かねます」と慇懃に応えてみれば、ギスギスに尖った空気も少しは丸みを帯びようというもの。
好むと好まずにかかわらず、我が国は「言霊の国」なのである。

しかしまあ、相も変らず全くもって読書感想の様を呈していないが、要するに「この作品にも恋をした」と、そういう次第でなのである。


映画版もいつか
★★★★☆