昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

戦国闘病記『白頭の人』

f:id:ryodanchoo:20200514202924j:plain

富樫倫太郎著

 

大谷吉継

知ってる人は皆大好き、知らない人は何にも知らない。
俺は勿論大好き。本作読んで更に好きになったね。
簡単に言うと、豊臣秀吉の家来で石田三成の親友、「関ヶ原の戦い」で一番活躍した人です。
あの秀吉をして、百万の兵を指揮させてみたいと言わしめた男ですよ。

まぁ~~ホントかっけぇー。
知ってる人は知ってるんですけど、泣かせるエピソードてんこ盛りなのよ。
文武両道、秀吉からは信頼され、家臣や同僚からは慕われ、家族からは愛される。
非の打ちどころが無い名将なんです吉継。でもたった一つ弱点が、、、
病。ハンセン病を患ってるんですね。
本作でも、この病気との闘いが戦国武将としての戦いと共に大きなテーマとなってます。

で、俺の一番好きなエピソードが、秀吉の茶会でお茶を回し飲みしてるときに吉継の番で、顔から膿が茶碗に落ちちゃうのよ。
当然その後は、病気が伝染るのを嫌がって誰も飲みたがらないわけ。
万座の中で恥をかき居た堪れない吉継。
それを見かねた幼きときからの親友石田三成が、「おい喉が渇いた、早く茶碗を寄越せ」つって一気に飲み干すっつー男の友情エピソードがあるんです。
嗚呼、多分ここで泣いちゃうんだろうなぁ~と予想しつつ読み始めたら、初っ端の秀吉に仕官するとから涙ぐんでんの。
どんだけ涙腺パッキンユルユルなんだよッ!

初っ端からこれだったら件の茶会もだけど、メインの関ヶ原じゃ号泣必至だなと覚悟していたら、これがやや肩透かし。
ネタバレになりますけど、茶会で例の膿入りお茶を飲み干すのが何とッ秀吉っつーね。
ええーーッ!三成じゃねぇーのッ!?ここは三成でしょ~~ここは三成でしょ~~、ブログアイコンでモロバレですけど俺、石田三成ファンなんです。
ここでの友情が関ヶ原の伏線になるのにぃ~~そうそう関ヶ原も何かアッサリなんよ。
そもそもページ数が全然足らん上にエピソードてんこ盛りなもんだから、後半イベントが流れ作業みたくなってんのよ。もったいねえぇ。
やっぱ増項するなり、生涯全てを描くんじゃなくて時期を絞ったほうが良かったかと。

っつーわけで話は流れてっけど、キャラは最高。
まぁ元の素材が素晴らしい上、更に富樫先生の味付けが冴えわたってるんで、全員ホント魅力的。
中でも際立ってたのが豊臣秀吉です。まさに理想の上司を絵に描いた様。
最近の秀吉像といえば、権力欲に妄執した老害っつーイメージばっかだったんで、これだけで新鮮。
しかし先の茶会の例じゃないけど、最大の見せ場といっていい吉継と三成の友情に割って入るのは如何なものか?
やっぱあそこは三成でしょ~~←クドいw
虎之助(加藤清正)、市松(福島正則)、佐吉(石田三成)、平馬(大谷吉継)、少年時代四人組の「秀吉学級」青春ドラマテイストもイイ感じ。
それぞれ仁・智・勇としっかりキャラ立ちしてて少年漫画みたい。
ここをガッツリ描いとけば、後の関ヶ原で、敵味方に別れる様がもっとドラマチックになるのに!嗚呼もったいない。
富樫先生にかかれば、あの黒田官兵衛さえもお節介焼きの良い人に大変身でビックリ。

あとはやっぱり闘病描写ですかね。
日に日に容姿が崩れていく奇病、周囲の差別と偏見、支える家族愛。
ベタですけどやっぱ難病モノは来ますね。終始ウルウル。
現代より遥かに差別が激しい、当時のハンセン病患者の暮らしぶりが作中散りばめてあるんですが、これが中々に興味深い。
もののけ姫』とかもそうでしたけど、患者同士コミュニティを形成して、お互い助け合って暮らしてるっつーね。
理不尽に辛い目にあって尚、世を怨まず人を妬まず、他人に優しく接することが出来ます?
一時は己の不幸に絶望した吉継も、彼等の生き様に励まされ活力を取り戻すと。
俺もこんな風に、常に強く、そして優しくありたいもんです。


返す返す後半の失速が残念
★★★☆☆