昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

島津義弘伝???『衝天の剣/回天の剣 島津義弘伝』

f:id:ryodanchoo:20200629195812j:plain

f:id:ryodanchoo:20200629195821j:plain

天野純希著

 

戦国最強は誰か?
歴史ファンなら一度は、侃侃諤諤の激論を経験されてるかと思います。
信玄か謙信か、それとも本多忠勝か、はたまた両兵衛か?
戦場を支配する指揮能力なのか、単純に個人の武力か、戦そのものを方向付ける戦略戦術か?
どの要素を重要視するかや、勿論個人の好みでも相当バラつくと思います、、、
がッ
どう集計しようと、必ずやその一角を占めるであろう漢、今回の主人公島津義弘その人です。

えッ!?御存知無い??
嗚呼、これほどの武名を轟かせながら、歴史ファン以外はやっぱそうでしょうね。
朝鮮出兵での大活躍や、関ヶ原の中央突破とか超有名なんですけど。知らんかー。
っつーわけで、上巻が文禄・慶長の役、下巻関ヶ原本領安堵まで。
いきなりクライマックスッ!
大友/龍造寺との九州三国志や、秀吉の九州征伐も正直あんま詳しくないんで、これを機会に読んでみたかったんですけど、前菜すっ飛ばし特濃メイン二皿状態です。

ワクワクしながら読書開始、、、んッ!?標準語??
オイオイオイ、何で薩摩弁じゃねぇーのッ???
いやいやいや、天野先生、義弘が標準語ってありえないでしょ。
百歩、百歩譲って、義久/歳久が標準語ならまだしも、、、否、やっぱ島津四兄弟は絶対薩摩弁でしょ。
猛将感薄い薄い、標準語のイメージ皆無だから違和感ありまくり。

そして視点のブレ。
長兄の義久、家康、果ては朝鮮水軍の名将李舜臣まで。
島津義弘伝ですよね?義弘をどっしり主役に据えましょうよ。

さらに、義久/歳久の智将パートが暗いッ!
豊臣政権へ恨み骨髄のお二人。
乱れ飛ぶ裏切り、暗殺、陰謀、姦計の数々。
義弘の息子、忠恒との島津家内の権力闘争。身内同士の士気の上がらない湿った戦。ああ、キツいなぁ~とダレかかったところで、義弘の豪快な武勇伝で引き戻す展開。
今作読むに以前は、島津四兄弟といえば鉄の結束というイメージだったんですが、、、

勿論、天野先生以外の島津を描いた作品も読んでみないと何とも言えませんが。
兎に角、義弘以外のキャラが、小難しい理屈を捏ねくり回してて取っ付きづらい。
戦場で正々堂々、槍をブン廻してるほうが遙かに魅力的。
あと甥っ子の豊久ね、こちとら『DRIFTERS』以来の大ファンですから。
この二人の戦バカな好漢振りが、作品の陰鬱な雰囲気をかろうじて押し止めてます。

かつての宿敵立花宗茂との友情や、寡兵でもって大軍を打ち破る少年漫画バリの演出も燃えます。過剰演出だろッ!と突っ込みたくもなりますが、事実なんだなぁ~コレが。
そして、我等が石田三成の醜態振りw
コイツの所為で関ヶ原負けたといわんばかり(哀)
まあね、百戦錬磨の猛将、義弘からしたら三成なんかシャバ僧もいいとこでしょうから。
でも最後に花を持たせるあたり、人気武将だから気を遣ったんですかね天野先生?
そうそう、三成にも視点ブレっからね→いらねぇっつーのッ!島津義弘伝なんだから。

そうなんですよ義弘のシーンは、もうね侠気の塊みたいなもんですから。凄惨な戦闘シーンだとしても、一陣の涼風が吹き抜けたかのような爽快感があるんですけど、、、
他のパートがね、ホントに陰鬱だから。
後半の本領安堵を家康と折衝する件なんか、義久ばっかで義弘なんて殆どオマケみたいなもんです。
題名の通り、義弘主人公でガッツリ書いていだだきたかった。


題名に偽りあり
★★★☆☆