昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

反安部に非ず『レオン氏郷』

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安部龍太郎

 

蒲生氏郷ですね、御存知?
ホレ、あのぉ~、もみあげが“シャキーン”ってなってる人。

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正直俺もあんまり詳しくないんです。
本能寺のときお父さんが安土城守ってたってことと、秀吉が関東の家康を北から牽制するために会津に大封したってことぐらい。
三英傑に見込まれた名将ってことで、これを機にガッツリ触れておこうかと。

写真を御覧いただきたい。
いや、もみあげの方じゃなくて表紙の方。
文庫でしょ、いつものハードカバーじゃなくて。
そうなんです今回は図書館じゃなくて友人のオススメ。
ちなみに次回も安部作品です、二冊借りましたんで。
まあ作家さんからしてみれば買えよッ!って話なんですが、ホント借りてばっかでスイマセン。
しかもッ、好き放題感想垂れ流すかんね、ごめんなさい。

さて「レオン氏郷」ですが、、、
う~~ん、、、安部先生は秀吉嫌いなんかな。
ココでも何度も述べてきてますが、俺、歴史小説の登場人物を善悪、美醜、優劣でクッキリ色分けすんの大嫌いッなんです!!

いやぁ~~安部先生クッキリッッ
今時珍しいんじゃない?最近はさ、敵側にも事情があるんだろうが引けない、止むに止まれず戦うみたいなのが多いでしょ、あいつは悪い奴だからやっつけろ!みたいなのは少ないですよね。
翻って今作、時代劇か独裁国家プロパガンダ映画かってぐらい白黒クッキリッッ
ほぼ全編「氏郷善/秀吉悪」の価値観ゴリ押し。
オイオイオイッ、面白くなかったらブン投げてますよっと。
そーなんです面白いんです、全く共感せんけど。

聖人君子大いに結構。
でもね戦国の世ですよ、親子兄弟で殺し合う時代なんですよ。
こんな甘ちゃんが会津四十二万石の大大名に登り詰められるかね。
ハッキリ言って、ギラギラ欲望丸出しの秀吉や伊達政宗の方が何倍も戦国武将らしいです。
何か日本人って、上に立つ者に対し過度に清廉潔白さを求めるじゃないですか。
勿論重要な要素ではありますが、それだけで大丈夫ですかと問いたい。
良い人ってだけでトップは務まりません、ある種の老獪さは絶対に必要。
蒲生氏郷総理大臣では、トランプや習近平プーチンとやり合うのは心許ないです。

兎に角安部先生の氏郷上げ↑があざと過ぎ。
こんなに上げ↑られたら、天邪鬼の俺じゃなくても反発したくなるというもの。
史実の合間で遊ぶのは良いんですが、その枠をはみ出してるっつーか。
文禄の役和平工作は三成と小西行長でしょう、何で氏郷の手柄みたいになってんの。
そのくせ利休切腹は助命嘆願で一山あるかと思いきやサラッと流れるし。
最後の秀吉○○未遂もやり過ぎの感あり。
史実とエンタメの絶妙なバランスが歴史小説の肝なんですが、安部先生は主人公に対する思い入れが殊の外強く、読んでて非常に引っ掛かります。
まぁ俺が、史実と善悪の色分けに拘り過ぎてるだけなんですけどね、もっと気楽に読めばいいんですよ→小説なんだから充分面白いんだし。
そうそう、氏郷と正宗の茶席のシーンは必見、この後いきなりミステリー展開になるのもご愛敬。
エンタメ偏重ですが盛り沢山なのでした。


次回もバランス厨大いに語ります
★★★☆☆