昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

関西トラウマ『罪の声』

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塩田武士著

 

「グリコ・森永事件」を題材としたミステリー。
未解決事件なので話の核心は創作とはいえ、とてもフィクションとは思えないリアリティ。
事件当時、私小学六年生、あの「キツネ目の男」の似顔絵と、関西弁の脅迫文は強烈に印象に残ってます。
正直俺、苦手っつーか、関西にあんま良いイメージ持ってなくて(関西の皆さんスイマセン)
多分こん時に、軽いトラウマ植え付けられてるんだと思う。
人生における関西のファーストインプレッションがまさにこの「グリコ・森永事件」だったわけで。
今まで何となく関西を忌避してきたけど、今回この作品を読むにつけ、小六当時の記憶がまざまざと蘇り、成る程そーゆーことねと納得しきり。

さて感想ですが、冒頭述べた通りフィクションなのに圧倒的リアリティ。
これが真相でも何の違和感も無いです。
むしろもし将来真相が解明したとき、あれ?「罪の声」と違うじゃんってなるくらい迫真の出来。
モロネタバレになってしまうので、あんま詳しく書けませんが、よくもまぁこんだけフィクションパーツが上手く組み合わせられるもんだと感心致しましたハイ。

単なる営利目的の企業脅迫に留まらず、極左組織や株価操作疑惑も絡んで、事件に対して非常に多層的な視点を加えてます。
そして企業に送られた脅迫テープの声が子供の声だったという事実から、事件に巻き込まれた子供たちのその後の人生にもスポットが当てられます。

主人公の一人である曽根俊也が、序盤にこのテープを発見する件から早くもテンションMAX↑↑↑
読者を昭和史の闇に引きずり込みます。
もう一人の主人公雑誌記者の阿久津英士と共に、少しずつ事件の真相と真犯人に近付いていく様は読み応え充分。
、、、故にッ
全ての謎が解明され、真実が白日の下にされされたとき貴方はどう感じるか?っつーことなんですけれども、、、う~~ん、、、

金への欲望と空虚な思想、ちっぽけな復讐心。
こんなものの為に善良な人間の人生が台無しになってしまう理不尽さ。
フィクションとは知りつつも、あまりに過酷な運命。
っつーか、塩田先生、ここまでやりますか。

それに引き替え大罪を犯した外道が、感傷に浸ってのうのうと生きてる現実(←いやいやフィクションっだっつーの、冷静になれ俺w)
ホントやり切れない気持ちになりましたね。
俊也主役の真相究明じゃなくて、聡一郎と千代子親子の苦難の半生の方が読みたかったかも。
ヤヴぇ、また俺書き過ぎてんじゃね!?
スイマセン、ネタバレが過ぎました。
兎に角、聡一郎と千代子親子にはこれまで苦労した分、精一杯幸せになってほしい(←だから、フィクションだっつーのッ!)


ミステリーベスト10 2016国内部門第1位、流石の読み応え
★★★☆☆