昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

当ブログは、小田雅久仁先生を応援しています『増大派に告ぐ』

f:id:ryodanchoo:20200604201559j:plain

小田雅久仁著

 

本ブログ最大の問題作ッ!?小田作品再びッッ

ryodanchoo.hatenablog.com

「雄雌」にも度肝抜かれたけど、デビュー作のコイツもマジで凄まじいね。
っつーか、二作目の「雄雌」でだいぶエンタメに振れたんですね。
アレはアレで相当ブッ飛んでたけど、かなりコッチ側に寄ってくれたんだ。

比喩を連発するゴテゴテした文章はそのままに、「雄雌」のふわふわした可愛らしい部分を根こそぎブッこ抜き、代わりにドロドロしたモンをこれでもかと押し込んだ感じ。
よく日本ファンタジーノベル大賞獲れたね。この狂気を選出する審査員も流石。

半分はキ○ガ○の妄想なんで、ストーリーもあって無きが如し。で、もう半分は息が詰まる様な児童虐待パート。
はっきり言って読み進めるのは辛いし、好き/嫌いかと問われれば好きじゃない。

だがッしかしッッ

無視できない強烈な「何か」が確かにある。
相変わらずのアマゾン絶賛も大いに納得するところ。
俺はとても絶賛する気にはなれんが。
読後感最悪。
読者に対する完全開示情報として本の厚さってあるじゃない。本を手にとって読んでいれば、あとどれくらいで物語が終わるかというのは誰にでも解るわけで。
読み進めていくうちラストは、あ~多分こうなるんだろうなぁ~こうなってほしい!っつーのを、ここまで身も蓋もなく裏切られたのは久々。
小田先生、いくらなんでもアレはあんまりだわ。
次はやっぱ「雄雌」テイストでお願いします。

そんじゃ最後に、溢れ出る小田先生の文才をちょっくら書き出してみるかね。

>世界じゅうのすべての人間がどろどろとした憎しみを腹にためこみ、
おそろしく不正直に生きてること。その不正直さこそが日常や平和と呼ばれるものであり、

>写真は単なる一枚の写真ではない。世界そのものへの刻印であり、宣言だ。
写真に撮られてしまった一瞬は時の流れから取り残され、世界の淀みにはまり、そこを鬱々と巡り続けることになる。

>昔、『宇宙の缶詰』という芸術作品が誰だかによって作られたんだそうです。
それはただ缶詰を買ってきて中身を食べたあとに、外側のラベルをはがして内側に貼りかえただけのものなんですけど、考えようによっちゃ、宇宙が中に入ってしまってるわけです。

いやぁ~素晴らしい!大好きこのセンス。
あッ、コレも書いとかなきゃ。
主人公の舜也と親友の大輔が疎遠になってしまう原因のシーン。
友情が暴力に沈黙し、勇気が恐怖に屈服する様が猛烈に読者を圧迫してくる。
心臓の鼓動は早まり、呼吸は乱れ、ページを捲る指は微かではあるが震えるくらいの臨場感。
この場面だけでも必読。誰でも一度や二度は人生で、圧倒的な恐怖の前に勇気が縮みあがってしまった経験があることでしょう。ハイハイ思い出してぇ~そうそうアレよアレ。
アレを、まざまざと追体験できます、、、わぁ~~したくねぇ~~w

っつーわけで、文章は凄いけど話はツマンナイし嫌い。でも超お薦めっつー不思議な作品です。


やっぱりオンリーワン
★★★☆☆