昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

朝、始業前に、職場で読むもんじゃない『恋しい女』

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藤田宜永

 

たまには恋愛モノでもと思ったら、、、か・な・り、官能的ハート達(複数ハート)
こりゃ、朝、始業前に、職場で読むもんじゃないね。

プレイボーイの江田俊太郎。

今は、違うタイプ三人の女性と同時に付き合っている。

仕事も恋愛も悠々自適だったが、娘ほども歳の離れた由香子にのめり込んでしまう。

希代のプレイボーイが陥った恋の罠とは、、、

いやホラ、ね、何せモテたことがないもんですから(哀)
複数の女性と同時に付き合うっつー状況が今までの人生で皆無。
勿論、願望はあります。タイプの違う女性と同時に付き合うなんてことが出来たなら、さぞかし人生の経験値も爆上げでしょう。
悠々自適モテモテの主人公「江田俊太郎」、才も甲斐性もない俺からすれば、正直クソ羨ましいッ!!
と、同時に妬ましさや憎らしさの対象でもあるわけで。
ここいら辺の屈折した劣等感と、モテの疑似体験でグイグイ読ませます。
やたら分厚い割に、ぶっちゃけ話の内容は煮え切らない惚れた腫れたの繰り返しなんで、本来なら途中でダレそうなもんですがサクっと読了。

藤田先生の作品は短編含め結構読ませてもらってますが、間違いなく一番面白かったです。
ホント、三人の恋人とダラダラ逢瀬を重ねるだけの話なんだけど、これが読ませるんだなぁ~
大人の女性でベテラン女優「奈津子」との割り切った不倫関係、暗に結婚を迫られ辟易しながらも、その肉感的魅力には抗えない「千鶴」との悦楽、娘と同年代の掴み所が無い不思議ちゃん「由香子」に振り回される恋。
着る服をクローゼットから引っ張り出すように、レストランで好みのワインを選ぶように、その日の気分でタイプの違う三人の女性を渡り歩く。
父親が残してくれた建設会社の社長に納まり、経済的にも余裕タップリ。
はあぁ~~俺も夜な夜な美女を引き連れ、東京の街を遊び歩きたいぜ。

そうそう、俊太郎がデートで使うバーやレストランがまた良いんですよ。
ちょっとした都心の食べ歩き案内みたいな。
でさ、少なからずショックだったのは、都心のアッパータウンの地名が初耳だったってこと。
「天現寺」とか「自然教育園」とか知ってます?
まあね、多摩地区に住んでますとね、広尾とか白金とか全く関係ないもんね。
読書中一抹の寂しさが漂ったりなんかしたりして。

で、モテモテウハウハだけじゃ小説としていかにも浅いんで、当然オチが用意されてるわけなんですが。
う~~ん、これが何とも、、、
マッタリと何も起こらないのがある意味魅力っつーか、安寧を貪るのが日常系の醍醐味っつーか、普通にプレイボーイを疑似体験出来ただけで満足なんですけど、、、
う~~ん、わざわざ“大事”にする必要あるんスかねぇ~~
濃厚な人間関係に心を削られるくらいなら、孤独の方がマシなのだろうか。
心地良い倦怠感や背徳感は吹っ飛んで、重い責任と悔恨、そして理解不能な対象と成就することのない恋心だけが残る。
何ともほろ苦いエンディング。
そうねぇ、やっぱ俺は、一人のパートナーに愛を貫くのがベストだと思いますよマジでw


藤田作品俺的No.1
★★★☆☆