昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

事実は小説よりも奇なり『天平グレート・ジャーニー─遣唐使・平群広成の数奇な冒険』

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上野誠

 

あらすじはですね、、、えぇーーっと、タイトル通りです。

 

戦国戦国戦国、たまぁ~~に幕末&WWⅡ
歴史小説は間違いなく一番好きなジャンルであるが、殆ど戦国時代に集中しているので、たまには違う時代もいいんじゃない?っつーことで、、、
時は奈良時代、テーマは遣唐使だッ!

正直、教科書レベルの知識しかねぇけども。
>阿倍仲麻呂吉備真備山上憶良聖武天皇らオールスターキャスト
ん?、、、き、聞いたことある、聞いたことありますよ勿論。
聞いたことあるだけ。何した人かは知りましぇん。
千三百年前の異文化交流か、、、まぁそこそこイケんじゃねぇーのぐらいの感じで読み始めたら、、、

面白えぇぇッ!!

オイオイ、コレどこまでホントの話よ?
何ちゅー数奇な冒険ッ数奇な運命ッッ
ダンジョンもドラゴンも魔法も出てこないけど、奇想天外なる大冒険、延べ移動距離数万㎞、七年に及ぶ壮大なる旅の記録。

何せ木を伐り出すとこからだから。
うん、遣唐使船に使う材料→そっからかよッ!
で、人選。基本的には国家の命運を担うスーパーエリート達。
只、賄賂やコネで捩じ込まれてくる者多数。
涙の出港、寄港地毎の大歓迎。
嵐に怯え、凪に苦しみ、やっとこ辿り着いた中国大陸。
当時世界最大の都「長安」、極東の小国日本の悲哀。
折角来たんだからと、貴重な文物をてんこ盛り。
人と物で溢れかえる復路の遣唐使船。
ヤベぇ、ヤベぇって。荷物積み過ぎ。
その時水平線の彼方より迫り来る黒雲。
大嵐→遭難→何か暑っちぃんですけど、ココどこ?
ベトナムッ!?
カレー辛ッフルーツ甘ッ
伝染病だぁ~海賊だぁ~~ヤベぇ、マジヤベぇって。
何か色々あって、、、北回りで帰ることに。
遂に遂に帰ってきた。
聖武天皇「お疲れ様」

ざっとこんな感じ。
凄ぇな遣唐使、凄ぇな万葉人の勇気と好奇心。
千年以上後の話となりますが、

ryodanchoo.hatenablog.comコレ読んだ時の感動が蘇りましたね。
我が国は要所要所にて当時の最先進国に学び、国を発展させてきたわけで。
その度毎に生じる異文化交流(摩擦と言ってもよい)は、俺の知的好奇心を刺激して止まない。

今回特に印象深かったのは、日本人の純粋・繊細・生真面目・バカ正直に対して、大陸で生きる民の逞しさ・強かさ・狡賢さ・大らかさよ。
温室列島で日本人同士和気藹々と生きてきたあまちゃんと、異なった文化・宗教・民族・言語の中で揉まれきた人間とでは人生を生き抜く力、サバイバビリティー能力が桁違いなワケ。

お人好しのバカは、生き馬の目を抜く国際社会ではしゃぶられるだけ。
それは千三百年前も現代も一緒。
脅し賺し騙しは当たり前。武力による恐怖で威圧するか?利益をチラつかせ釣り上げるか?血が流れない戦争、それが外交なんです。
協力を渋る新羅の船長を、脅しと利益供与でまんまと味方に引き込む件なんかこれぞネゴシエーションという爽快感。
でも、でもッ、武力より金より何よりも、“誠意”が一番効くこともあるっちゅうところがミソ。
我らが主人公、遣唐使判官平群広成(へぐりのひろなり)も最後の最後に巡り合ったのは“誠意”
「俺もお前を信じるから、お前も俺を信じてくれ」ちゅーアレです。

著者の上野先生は、作家ではなく学者とのこと。
凝ってない素朴な文章と台詞が、逆に心に沁みます。
いやぁ~~古代史のロマン、充分堪能させていただきました。


それにつけても日本史の面白さよ♪
★★★★☆