昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

『告白』のトラウマリセット『物語のおわり』

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湊かなえ

 

湊先生、お久し振りですッ!!
何とッ『告白』以来、実に六年振り(←短文の感想なんで、ネタに困ったらアップします)。

めちゃめちゃ面白かったのに、こんだけ期間が空くってことは、『告白』がどんだけ俺にトラウマ植え付けたかちゅーことですよw
湊先生らしからぬ(失敬)癒やし系の良さそうな作品を見っけたんで、手に取らしていただきました。

夢破れたり、大病や親子関係など様々な悩みを抱えて思いを馳せる地、北海道に降り立った旅人たち。
彼らの手から手へ渡る謎の小説、「空の彼方」
夢を追い、夢を諦め、再び夢を追いかける。
「空の彼方」を読んで勇気付けられた旅人たちは、またそれぞれの日常に戻っていく。

良い話。THE良い話。
北海道の雄大な自然と善良な人々、繋がっていく親切と幸せ。
短編連作形式で話の雰囲気も前回の『鏡の花』と似てる。
どっち借りるか迷っただけのことはあるぜ。
ただ、死が濃厚に絡んでこない分、こっちの方が深刻にならずに済む感じ。
重た過ぎる話は、たとえフィクションとはいえ耐え難い昨今、めっきりメンタルが弱くなったもんです。

で、気持ちよく読んでましたら、チラチラと捩じ込んでくんだよなぁ~~
湊かなえ色っつーか、心の闇っつーか、人間の醜悪な部分を。
いろいろあったけど美しい自然の中でリフレッシュ、また頑張っていこうと決意を新たにする登場人物たちを見て、こっちも良い気分に浸ってんのに、、、
生々しいスクールカーストとかいじめとかいる?
まぁ先ず悩みがあって、それを克服していこうっつー話なのは解りますが。

夢を追う人に対して、誠意を持って反対する人はいいのよ。
いろいろ厳しい意見を言うのも、本人の為を思ってのことじゃん。
でも嫉妬からただ足を引っ張る奴とか、自分の価値観だけを押し付けて他人の夢を全否定してくるキャラ、まるっきり魅力皆無、ただ読者に嫌悪感を抱かせるためだけに配置されたような登場人物も出てくんのよ。
コイツらいるか?不快なだけだわ。
ハムさん(作中、夢反対派の大ボス。しかし、愛情と誠意たっぷり)のキャラが立ってるんで、余計にこの醜悪な輩共が鼻について、読書の引っ掛かり具合が半端無ぇえッ!!
やっぱ、湊かなえ色を少しでも滲ませないことには、ファンが納得しないんでしょうか。

ハイ、文句はここまで。
登場人物それぞれが抱える等身大の悩み、多様な読者も誰かには共感できるはず。
北海道の大自然の描写も実に活き活きとしていて、俺もチャリンコで走りたくなったぐらい。
そして物語のキモ、謎の小説「空の彼方」
このラッキーアイテムが次々と旅人たちの手に渡っていく様は、読んでてワクワク感が泉の様に溢れ出てきます。
何たってこれさえ読めばスッキリ気分一新、読者の方もいつ手渡すんだつって、水戸黄門の印籠状態で待ち構えてますからw お約束の強みですね。
一体誰が書いたのか?
北海道を巡り巡って旅人たちにちょっぴりづつ勇気を配って廻った「空の彼方」
最後にちょっとした奇跡を起こします。

「受けた親切は直接返せなくても、他の誰かに返せばいい」

↑みたいな台詞を登場人物の一人が喋るんですが、良い台詞だなぁと思って(正確にメモっときゃよかった)
まさにコレ。親切が北海道の中をグルグル巡る話。
この思いは、たとえ北海道に行ったことがない読者にも、多分、、、届くんじゃないでしょうか。


情けは人のためならず
★★★☆☆