昭和の重力に魂を引かれた漢

小説の感想文、たまぁ~~に雑記

“最高に後味の悪いハッピーエンド”『絶叫』

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葉真中顕著

 

いろいろとあり過ぎまして、、、さて、何から語りましょうか、、、

う~~んとね、俺、乱読派なんですよ。
特定の作家やジャンルに拘らず、書架での一期一会に任せるっつーか。
作品の情報を殆ど仕入れず、タイトルと装丁を観て直感で決めるみたいな。頼るにしても帯の煽りぐらい。
こーゆー本の漁り方してっと、時々予想外の方面からとんでもない作品が飛び込んでくることがあります。

所謂「転落モノ」
いやホラ、『東京難民』読んだばっかだから。

ryodanchoo.hatenablog.com暫くコレを越える「転落モノ」は無ぇなと油断してたら、どえらいモンと出会ってしまった。

幸せとは呼べないまでも、ごく平凡に生きてきた「鈴木陽子」
父親の失踪を皮切りに、次々と人生の歯車が狂い始める。

「陽子」さん、1973生まれで俺と年代がほぼ一緒なんだよね。
「陽子」の状況の変化に応じて、要所要所で時事を絡ませてくんのよ。
同時多発テロ地下鉄サリン事件リーマンショック、、、そういや俺はあん時どうしてたっけ?と自然と自分の人生とオーバーラップさせちゃうよね。
で、「陽子は○○した」みたいな書き方じゃなくて、「あなたは○○した」みたいに二人称で語りかけてくるもんだから、もう完全に自分と重ねちゃって。
こーなってくると、男女関係無ぇ、性別を越えて自分の分身みたいに感情移入する始末。
何か似てるんだよなぁ~薄幸な家庭環境っつーか、不器用な生真面目さっつーか、絆を求め彷徨うっつーか、、、
勿論ここまでの激動は無いにせよ、「陽子」さん、最早他人とは思えねぇっス。

兎に角、一ページ一行目から最後まで怒涛の展開。
国分寺のマンションで「鈴木陽子」の死体が発見され、通報を受けた女刑事が彼女の人生を辿っていくという構成。
合間に挟まれる「陽子」の回想(何故「あなた」と二人称で語られるのか?)と、かつての「陽子」の関係者達の証言。
徐々に明らかになっていく彼女の壮絶な人生。

マジで参った。う~~ん、何と表現したらよいものか、、、
何が一番近いかね、、、驚愕か?、、、何かピッタリな単語が思い付かん。
兎に角、俺「転落モノ」好きで、今までいろいろ読んできたけど、これほど、動揺?うん見付けた動揺だわ。動揺した作品は初めて。

あんな、あんなね、“最高に後味の悪いハッピーエンド”あります???

俺もね、「陽子」さんには幸せになってほしい。
あんなに、一生懸命真面目に生きてきたんだもの。幸せになる権利がないわけないじゃないかッ!
が、しかし、あれは、、、

キィィィーーッ全てをブチまけたいッ!
でも当ブログ一応、ネタバレは御法度なんです。
どう?読みたくなってきた?いやぁ~~読んでほしい、マ・ジ・で。
そして語り合おう、あの、あのッ“最高に後味の悪いハッピーエンド”についてw

俺が驚愕し動揺した部分はネタバレに直結してっから、感じたことの半分も書けんな。
ホント人生って何だろうね、何が幸せで、何を求めてるのか。
「陽子」さんは「居場所」って言ってたけど、、、
ちょっとだけネタバレさせてもらうと、自殺した「陽子」の弟が金魚の姿の幽霊になって度々現れるんだけど、そいつが言うわけです。人生で起こる出来事は全て自然現象だと。
「すべてがただ降ってくるだけの自然現象」
幸せも不幸もない、姉さんがどう感じるか、どうしたいかだけだと。
これがまた、不気味さといい、哲学的な物言いといい、良いキャラしてんだわ。
全ての葛藤を越えた諦観、悟り?ですよ。
でもやっぱ空しいじゃん、全部自然現象だなんて。そんなスッパリ割り切れねぇっつーのッ!
結局俺も「陽子」さんも世の中の殆どの人も、人生の迷い人なんよ。
この「金魚」っつーのも、キーアイテムなんで、これにも是非注目していただきたい。
度肝を抜かれる伏線が一つ埋まってっから。

そうそう、驚愕ついでに帯にも触れておかねばなるまい。
写真観てよ。「ラスト4行目に驚愕。」

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ここまで書いてきた通り、充分楽しませてもらってたんで、四行目も超期待で読んだところ、、、、、、。
正直気付かなかった。多分この帯の煽り無かったら、読み流してしまったと思う。危ねぇ危ねぇ。
で、読了後三分ぐらい経って、んッ!?待てよ、、、あれアレのことじゃねッ!?つって該当箇所を読み返すに、、、やってくれるぜッ葉真中先生ッッ
絶叫ならぬ、絶句ですよ。二つ目、度肝抜き二つ目。
どう?読みたくなってきた?いやぁ~~読んでほしい、マ・ジ・で。
そして語り合おう、あの、あのッ“最高に後味の悪いハッピーエンド”についてw

本筋の「陽子」さんの人生は勿論だが、社会の暗部である貧困問題にも切り込んでいるので、ソコも読み応えアリ。
「転落モノ」って結局、貧困問題をどうするかっつーことに繋がっていくわけで。
本来貧しい人を助けるための福祉を喰い物にする外道がまた御登場ですよ。
所謂貧困ビジネスです。
戸籍クリーニングの手口とか見るに、胡散臭ぇと倦厭してたマイナンバーが、やっぱアリじゃね?と思えてきたり。
社会の安定のためには、貧困問題の解決は絶対に避けて通れない難題ですが、うん、どーしたもんかねぇ。

取り留めの無い感想になってしまいましたが、目茶苦茶面白かったことは確か。
多分「今年の一冊」大賞獲るでしょう。

※追記※

予言通り、見事 2016 年間ベストワンに輝きました。


“最高に後味の悪いハッピーエンド”
★★★★☆